法人税法上の役員報酬の取扱い(その2)-定期同額給与は経済的利益に要注意
毎月の額面報酬を変動させることが定期同額性を損なうというというのは理解されているものの、額面報酬以外に役員給与として取り扱われる項目が生じ、それにより定期同額性が否認されるということが生じるリスクがあります。
つまり、法人税法上、債務免除による利益その他の経済的な利益も役員給与として取り扱われることとされているところ、「債務免除による利益その他の経済的な利益」と認識していなかったため役員給与として認定され、さらに定期同額性がないので損金算入もできなかったというようなケースが生じうるということです。
「債務免除による利益その他の経済的な利益」とは?
「債務免除による利益その他の経済的な利益」は、実質的にその役員等に対して給料を支給したことと同様の経済効果をもたらすため、法人税法上、役員給与として取り扱われるわけですが、具体的には通達で以下の項目が掲げられています(法基通9-2-11)。
- 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額
- 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
- 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額
- 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権の額に相当する金額
- 役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額
- 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
- 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
- 役員等に対して無償又は低い対価で6及び7に掲げるもの以外の用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
- 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
- 役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額
- 社交団体の入会金、経常会費等運営のために要する費用で役員等の負担すべきものを会社が負担した費用の額
- 会社が役員等被保険者および保険金受取人とする生命保険契約を締結して保険料を負担した場合におけるその負担した保険料の額
基本的な考え方としては、役員が何らかの経済的利益を受けていたら役員給与として取り扱われる可能性がると疑えということだと思います。
ただし、上記に該当した場合に、直ちに定期同額性を否認されるわけではなく、上記3.~5.以外のものについては、継続的に供与される経済的利益として、定期同額給与の範囲に含めることができる可能性ある点にも留意が必要です。
また、社会通念上妥当な金額のお見舞い金のようなものの場合、経済的な利益ではありますが、所得税法において経済的な利益として課税されないもので、かつ、その法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものについては、給与として取り扱わないものとされています(法人基本通達9-2-10)。
長くなりましたので今回はここまでとします。