国際取引と消費税(その1)
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う課税資産の譲渡等と課税貨物の輸入を課税対象としています(消費税法4条1項、2項)。
消費税については国内での通常の取引であっても、消費税の取扱いについて迷うものもありますが、さらに海外との取引となると、どのように取り扱うのが正しいのかを判断するのがより困難になります。
さらに、2015年10月1日以降、電気通信利用役務についてリバースチャージ方式が導入されたことによって、より一層取扱いが煩雑になっています。基本的な事項の再確認から国際取引に係る消費税の取扱いまで確認していくこととします。
1.消費税の課税関係全体図
消費税の課税関係の全体図は以下のようになっています。
以下の図で色づけしてある部分が、国際取引の消費税を考える際に大きく影響する部分とされています。
(出典:「五訂版 国際取引の消費税Q&A 上杉秀文 著」)
2.「資産の譲渡等」の意義
資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡、資産の貸付け(資産に係る権利の設定その他他の者に資産を使用させる一切の行為(電気通信利用役務の提供に該当するものを除きます。)を含みます。)及び役務の提供を意味します(消費税法2条1項8号、2項)。
3.非課税取引
非課税取引は、消費税を課するとされる取引の定義に該当するものの、消費に負担を求める消費税の性格からみて課税対象とすることになじまないものや社会政策的な配慮から課税することが適当でないもので、非課税取引となるものは消費税法の別表一、二で限定列挙されています。
具体的には以下の項目が非課税項目とされています。
<消費税の性格から課税対象とするのになじまないもの(別表一)>
①土地の讓渡、土地の貸付け
②株式、社債、国債等の有価証券の譲渡、支払手段(小切手、手形など)の譲渡など
③貸付金利息、預金利息、手形割引料、保証料、保険料など
④郵便切手、印紙、物品切手などの譲渡
⑤行政手数料、外国為替など
<社会政策的な配慮に基づくもの(別表一)>
⑥社会保険医療など
⑦介護保険サービス、第一種、第二種の社会福祉事業など
⑧助産
⑨埋葬料、火葬料
⑩身体障害者用物品の譲渡、貸付け
⑪学校、専修学校等の入学金、授業料、検定料、施設設備費など
⑫教科用図書の譲渡
⑬住宅の貸付け
<非課税の外国貨物(別表二)>
①有価証券等
②郵便切手、印紙、証紙、物品切手等
③身体障害者用物品
④教科用図書
上記のうち「郵便切手」については、非課税取引なの?という疑問が生じるかも知れません。郵便切手については、より正確には、日本郵便株式会社等別表一で定められている事業者が行う郵便切手の譲渡とされています。
郵便切手は商品券のようなものなので、郵便局が切手を売却した時点では非課税取引となり、郵便サービスを提供した時に、役務の提供として課税取引に化けるという取扱いになっています。
また、非課税取引となるのは上記のとおり日本郵便株式会社等一定の事業者が行った場合に限られますので、いわゆる金券ショップが切手を売却する場合には課税取引として取り扱われることとなると考えられます。
4.輸出免税
消費税は、国内で行われる消費に対して、広く薄く税負担を求めようとするものなので、外国で消費されると考えられる輸出品に対しては課税が免除されています。
消費税が課税されないという点では非課税取引と類似していますが、輸出免税は「0%課税」と呼ばれることもあり、両者は全く異なります。
非課税取引の場合は、売上(資産の譲渡等)について課税しない代わりに、仕入れなどに課税された税額の控除も行うことが認められません。仮に課税売上割合が0%であれば、個別対応方式であろうと一括比例配分方式であろうと、仕入などに対して課税された消費税の税額控除は行えないことになります。
一方で、免税取引の場合は、仕入れなどに課税された税額も精算の対象とされ、通常の課税取引と同様、消費税の負担をなくすことが可能となるという点で大きく異なります。
また、輸出免税は、国内取引に該当するものについて適用され、国外取引であれば不課税取引として取り使われることとなりますので、取引の内外判定を正確に行うことが必要となります。さらに、そもそも「輸出」に該当するのはどのような取引かも確認しておく必要がありますが、これらについては次回以降で確認したいと思います。