日米同時上場のLINEーIPO時に異なる監査法人の監査報告書がついているのは珍しい
日米で同時上場を果たしたLINEの株価は公募価格3,300円に対して4,345円で取引を終えました。日本時間の前夜に取引が開始されたニューヨーク市場での終値が41.58ドルですので、この辺の金額に収束するのは当然といえば当然です。
上場日には通常通期の見通しがでるので、16年12月期はどんな予想なのかを確認してみると、業績素養は開示されていませんでした。
また当社は、東京証券取引所に加えてニューヨーク証券取引所にも上場しているため、米国の証券規制上のリスクも慎重に勘案し、現時点において業績予想の公表は行なっておりませんが、7月27日公表予定の2016年12月期第2四半期決算短信において、第3四半期の見通しに関する定性的情報を公表する予定であります。
とのことです。米国では訴訟のリスクがあるので業績予想なんて出していないようですが、であるとすると第2四半期の短信でも状況は同じではないだろうかという気はします。
ところで、同社の有価証券届出書を眺めていて仕事柄、監査報酬はどれくらいなんだろうと確認してみたところ、以下のようになっていました。
2014年12月期が約6億3800万円に対して、2015年12月期は約2億1400万円と監査報酬が約1/3になっています。
なんでこんなに報酬が違うのかと、よくみると注1に最近連結会計年度の前連結会計年度はトーマツの監査、最近連結会計年度はPwcあらたの監査を受けている旨が記載されています。
また、「その他の重要な報酬」として最近連結会計年度はPWCグループのファームに公認会計士法第2条第1項に規定する業務に係る報酬として72,068千円、非監査業務に基づく報酬として37,239千円を支払っている旨が記載されていました。
したがって、これを合算して考えると最近連結会計年度の監査報酬は約2億8600万円となりますが、それでも約45%の水準にとどまっています。
2014年12月期は上場準備初期で非常に時間がかかったという可能性は否定できませんが、仮にそうだとしても、特に上場準備中はそこで監査法人を変更することは普通ないように思います。
2014年12月期が特殊な年度でなかったとすると、監査報酬の減額が答えなのかもしれませんが、実施すべき監査手続きは監査法人によっても大きく異ならないであろうことからするとここまで監査報酬に差が生じるものかなという気はします。
M&Aも積極的に展開しているようですし、LINEスタンプの収益認識一つとってもても以下のように単純ではないので、監査は大変かなという気はします。
仮想通貨がLINEスタンプの購入のために使用された場合、ユーザーの仮想通貨残高は、購入価格分減少し、LINEスタンプの収益認識期間にわたり売上収益として認識します。
当社グループは、ユーザーにLINEスタンプを提供するにあたって、本人として役務を提供しております。
当社グループによって追跡調査された過去の使用パターンに基づき、当社グループは利用者によるLINEスタンプの予想総使用の大部分は購入から90日間で発生していると判断しており、実際の使用は同期間中の初期に集中しております。従って、当社グループは、90日の見積使用期間にわたり、初期に比重を置く方法でLINEスタンプの売上収益を認識しております。
監査法人の変更は上場審査でも理由等がチェックされていると思いますので後ろ暗いことはないのだと思いますが、いずれにしても、新規上場時の直前期と直前々期に別の監査法人の監査報告書がついているのはかなり稀なケースだといえるのではないでしょうか。