閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

会社担当者による横領と税理士の責任

T&A master No.655 のニュース特集で”経理担当者による横領行為と顧問税理士の責任を巡る判決”が取り上げられていました。

この事案は、診療所を経営する納税者が顧問税理士に対し、診療所の経理担当者の不正行為(横領)を調査する義務を怠ったなどとして、顧問税理士に対して損害賠償を請求していたものです。

この記事によると、経理担当者による横領の一つは、診療所の事務室内にある金庫に一時的に保管されていた現金を約3年半にわたり着服するというものであったとのことです。横領額については明確に記載されていませんが、当該事案における損害賠償請求額が約7,000万円ということなので、このくらいの水準だと推測されます。

なお、当該横領については、「経理担当者が顧問税理士に診療所の現金を横領していた事実を告白」したとあるので、顧問税理士が横領を発見したということではないようです。

そして、納税者は、「税務顧問契約には税務申告の代行や税務相談など以外に、経営上の助言及び指導として伝票・現金出納帳を確認して会計上の不正行為が行われているか調査をするべき義務が含まれている」と主張し、「本件には明らかに不審な事由(院長出金との名目で多額の支出など)があったにもかかわらず報告義務を怠ったことが税務顧問契約上の債務不履行に当たるという主張を展開した」とのことです。

納税者の立場からすれば、金額の大きな横領であれば、気づいて貰いたいという気持ちはわからなくはありませんが、税務顧問契約で不正行為の有無を調査すべきというのは、やはり過剰な期待だと考えられます。

なお、この事案でも裁判所は、「不正行為の調査義務について、税務顧問契約の締結に顧問税理士と納税者との間で作成された契約書等はなく、納税者が明示的に不正行為についての調査を委任したと認めることはできないと指摘」したとされています。

仮に、顧問契約にそのような内容を織り込むのであれば、税理士としてもリスクが高まりますので、それなりの報酬を貰わないととても受けられないはずです。

不正行為が疑われる状況の報告義務について、裁判所は、税務顧問契約の委任内容は税理士の本業業務及び付随業務であるため、「顧問税理士が負う善管注意義務の内容として、一般的に納税者の財産又は診療所の運営に対する不正が疑われる状況にあるのかどうかを判断し、納税者に報告すべきであったということはできないとした」とのことです。

明確に契約で定められていなければ、そうだよなというところですが、興味深いのは「裁判所は、仮に会計上不正行為が行われていることを顧問税理士が知り又は不正行為が行われていると疑われる状況を顧問税理士が知ったにもかかわらず報告しなかったとしても、安易にこれを納税者に報告することはかえってその不正行為を行ったと疑われる者に対する名誉毀損等の問題すら生じかねないと指摘し、顧問税理士には法的な責任を負うべき義務違反はないというべき」と判断されたという点です。

確かに名誉毀損等の問題を生じさせる可能性がないとはいえませんし、むしろ納税者のタイプによっては、間違っていた場合に名誉毀損等の問題が生じる可能性が高いと考えられるケースもあるとは思いますが、不正行為が行われていることが疑われる状況を把握しているのであれば、基本的なスタンスとしては納税者に教えてあげるべきなのではないかと思います。

なお、この事案では横領に対する税理士の責任のほか、納税者の承諾なく顧問税理士が顧問料および決算報酬の増額分(112万円)を受け取っていたか否かという点も問題となっていたとのことです。

顧問税理士は、経理担当者を介して納税者から増額の了承を得ていると主張した一方で、納税者は同意していない旨を主張したわけですが、この点については、納税者が経理面の事務に積極的に関わっていなかったことなどからすれば、経理担当者が納税者に無断で顧問料等の増額を行った可能性があり、納税者の同意を推認できないとして、増額分の報酬については顧問税理士に返還を命じたとのことです。

納税者が本当に増額に同意していなかったとすると、納税者の側からは、不正の疑いに目をつぶる代わりに報酬の増額を受けていたといようにも映るという点が話をややこしくした一因となっているのではないかと思います。

関連記事

  1. 住民税額があがったのは・・・

  2. 不動産流動化に伴う信託受益権の譲渡取引-会計と税務で差異

  3. 平成28年税制改正に伴う外形標準超過税率対応状況(4/1更新)

  4. 平成29年度税制改正後も1円ストックオプションは損金算入OKとあ…

  5. 税金の滞納残高は14年連続で減少-国税庁発表

  6. 一定期間災害保障重視型定期保険が1/2損金算入保険になるようです…




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,952,473 アクセス
ページ上部へ戻る