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宴会への参加に関する労働法上の取扱い

今年7月に歓送迎会に参加していた労働者が残業のため帰社する過程で交通事故死したことが労災保険法上の業務災害に当たるとした最高裁判決が出されました。この判決は、各種事実関係から業務遂行性が認められると判断されたもので、どちらかといえば限定的なケースだと考えられますが、この判決に関連してビジネスガイド2016年11月号に「宴会への参加は労働法上どう位置づけられているか」(弁護士 渡邊 岳 氏)という記事が掲載されていました。

この記事では、「宴会への参加をめぐる労働法上の取扱いの整理」として以下の6つが取り上げられていました。

  1. 宴会参加時間と賃金
  2. 宴会中の事故と使用者の損害賠償責任
  3. 業務の過重性を判断する場面における宴会の位置付け
  4. 宴会の場でのハラスメントに当たる言動と使用者の責任等
  5. 宴会の場での言動と懲戒処分
  6. 宴会の場での言動を理由とする降職処分

今回は上記1~3について、参考になりそうなポイントについて確認します。

1.宴会参加時間と賃金

この点については、「この点の判断は難しい問題を含んでおり、労働時間制を肯定する判決が出ないとも限りません。しかし、筆者は、その帰結に疑問を持っています」として、労働時間性に対しては否定的な見解が示されています。

理由の一つ目は、労基法における労働時間は、使用者の指揮命令下におかれている時間とされているものの、「その時間中に何をすることが求められているかということは、労働時間制の有無を検討するに際し、当然考慮の対象となります」とし、「宴会参加中の労働時間制を考えると、宴会の場で業務打合せが続いている場合は格別、飲食・懇親が中心であるという場合は、労基法上の労働時間とは言えないと解されます」とされています。

理由の二つ目は、「賃金支払の対象となる労働時間(すなわち業務)か否かは、労災保険法における業務か否かよりも厳格に判断されるという事情を指摘できます」と述べられています。つまり、宴会への参加が労災法上の業務と認定されても、それが労働時間とされるとは限らないということになります。

これは、工場の最寄り駅から工場まで自社のマイクロバスで送迎中に事故にあった場合、労災上は通勤災害ではなく業務災害として取り扱われることがありますが、業務災害と取り扱われるからといってマイクロバスに乗り込んだ時から労働時間となるわけではないということからも理解できます。

なお、取引先の接待ということになると、自社内での宴会よりも労働時間性が肯定されやすくなるのではないかと考えられます。

2.宴会中の事故と使用者の損害賠償責任

最近は、酒の飲めない新人等に無理矢理飲ませるというようなことはなくなってきているとは思いますが、急性アルコール中毒やあるいは酩酊しての事故などが生じた場合に使用者の安全配慮義務との兼ね合いが問題となります。

この点に関連して、上記の記事では「太陽神戸銀行四街道支店事件(千葉地裁佐倉支部昭58.2.4判決)」が取り上げられていました。この事件は、銀行支店長主催の期末預金増強決起大会として飲食店で開催された宴会で、宴会に参加していた行員が店内の階段から落下し、意識を失った状態となったが、その場にいた支店長以下の者は、眠っている者と軽信して、救急車を呼ぶ等の措置を執らなかったところ、脳挫傷で死亡したというものですが、この大会への出席は任意ではなく事実上業務命令であったことなどを指摘して、業務中の事故として、使用者には安全配慮義務があるとしました。

これはそれほど違和感がありませんが、渡邊弁護士は、安全配慮義務について最初に判示した自衛隊車輌整備工場事件を引用し、「安全配慮義務が、使用者と労働者の間でのみ問題となる義務ではなく、「ある法律関係に基づいて社会的接触の関係に入った当事者」の間に認められる義務であるうえ、同義務が認められる場面が業務執行中に限られているわけではない」という点を指摘しています。

つまり、宴会への参加が業務性を有していないとしても、安全配慮義務違反が問題となり得ることがあるということですので、注意しましょう。

3.業務の過重性を判断する場面における宴会の位置付け

これは過重労働により心身の健康を害したとして、労災保険法上の業務災害にあたるかどうかを判断する際の労働時間に宴会への参加時間が含まれるのかどうかという論点です。

この点については、取引先への接待時間につき、労災認定にあたって業務の量的過重性を判断する際の労働時間に算入されたものもあれば、歓送迎会への参加時間が、労働の量的過重性を判断する際の労働時間に算入されなかったものもあります。

ポイントは何かですが、「過重労働に起因する健康障害に当たるかどうかを判断するに際しての労働時間算定の場面において、宴会への参加時間を労働時間とみるかどうかに関しては、出欠についての任意性の有無が重要な判断要素」と述べられています。

任意かどうかは形式的なものではなく、実質的に参加が必要とされていたかどうかで判断されることととなりますので、実質がどうなっているのかについても改めて考えておく必要があります。

忘年会・新年会と宴会が多くなるシーズンですが、上記のような点には気をつけましょう。

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