負ののれん-持分法適用の場合は何故営業外収益?
企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)において負ののれんは特別利益として処理することが要求されていますが、その論拠としては「負ののれんの会計処理」(110項)において以下のように述べられています。
「負ののれんの発生原因を認識不能な項目やバーゲン・パーチェスであると位置付け、現実には異常かつ発生の可能性が低いことから、異常利益としての処理が妥当であると考えるものである。また、異常利益として処理することを求める(経常的な利益とはならない)ことは、時価の算定を適切に行うインセンティブになるという効果もあるといわれている。(110項)
しかしながら、持分法適用会社の場合は、取得時に負ののれんが生じた場合、持分法投資損益に含めて営業外損益として処理されます。
この会計処理は持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)16項および27項において、以下のように明確に述べられており、表示方法を議論する余地はありません。
16. 連結財務諸表上、持分法による投資損益は、営業外収益又は営業外費用の区分に一括して表示する。
27. 連結原則では、持分法による投資損益については、投資に係る損益であるため、一括して営業外損益の区分に表示し、経常損益に反映させることとしていた。本会計基準でも、このような従来の取扱いを踏襲している(第16項参照)。なお、持分法を適用する被投資会社に係るのれんの当期償却額及び減損処理額並びに負ののれんについても、持分法による投資損益に含めて表示することに留意する。
「負ののれんについても、持分法による投資損益に含めて表示する」とされており、一方で「持分法による投資損益は、営業外収益又は営業外費用の区分に一括して表示する」ということなので、結局、負ののれんも通常どおり持分法投資損益として営業外損益として処理されるということになります。
連結対象の場合には「異常かつ発生の可能性が低い」といわれるものが、持分法適用時には営業外損益として処理されることにはなんとなく違和感を感じますが、このような処理は「持分法による投資損益については、投資に係る損益であるため、一括して営業外損益の区分に表示し、経常損益に反映させる」(27項)という考え方を優先したもののようです。
子会社の場合も投資時には投資額とリターンを勘案しているはずで、投資に係る損益であるというのは同じだと思いますが、株価算定などにおいても支配権を獲得する場合はコントロールプレミアムが加味されることが一般的であるということからすれば、支配権を獲得する場合に「負ののれん」が生じるというのはより異常性が高いというのは間違いないと考えられます。
一方で、「異常利益として処理することを求める(経常的な利益とはならない)ことは、時価の算定を適切に行うインセンティブになるという効果もあるといわれている」という観点からすれば、持分法の場合は会計基準上、議論の余地無く経常的な利益として処理することが可能となりますので、怪しげな負ののれんが計上されるリスクは高くなりますが、この辺は持分法だから金額がそれほど大きくならないはずだという割り切りなのかもしれません。