税効果ー開示拡充の見直し案
平成29年2月21日に開催されたASBJの第47回税効果会計委員会において、税効果会計基準の開示に関する部分の見直し案が提示されたとのことです(経営財務第3299号「ASBJ税効果会計の開示拡充の文案提示」)。
繰越欠損金に関する事項の注記を拡充するかが検討されていましたが、結果として、以下のような開示を追加する方向で基準を変更する方向で文案の提案がなされています。
追加が提案されているのは、税効果会計基準第四「注記事項」に2-2を設け、以下の事項を規定するというものです。
2‐2.税務上の繰越欠損金に係る次の事項
(1)繰越期限別の次の金額
①税務上の繰越欠損金の額に税率を乗じた額
②税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産から控除された額
③税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
(2)税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している連結会社があれば,次の事項
①税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している連結会社の名称
②税務上の繰越欠損金が生じた原因
③税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産の計上根拠
開示事項が増えるのはそれだけで手間ではあるものの、上記(1)は事実を書くだけなのでそれほど手間はかからないのではないかと思われます。一方で(2)②の「税務上の繰越欠損金が生じた原因」と③の「税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産の計上根拠」は記載することの負担はそれなりにあるのではないかと思われます。
また、評価性引当額に関する事項についても、詳細な開示を要求するように注8を以下のように変更する方向で提案がなされているとのことです。
注8)繰延税金資産の発生原因別の主な内訳の注記について
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するにあたっては,繰延税金資産から控除された額(注5に係るもの)を併せて記載するものとする。 繰延税金資産から控除された額は,税務上の繰越欠損金に係るものと将来減算一時差異の合計に係るものに区分して記載する。
当該繰延税金資産から控除された額に重要な変動が生じている場合,次の事項を記載する。
(1)繰延税金資産から控除された額に重要な変動が生じている連結会社の名称
(2)将来減算一時差異合計に係る評価性引当額の変動額又は税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額の変動額
繰越欠損金の部分で追加が想定されている事項からすると、評価性引当額についても変動した理由を書けというものがありそうな感じではありますが、そこまでは要求されないですみそうです。
最後に、未実現損益の税効果については米国基準と整合性を図るべきかという観点で検討がなされていましたが、「コストを懸念する声が聞かれたことや、税効果会計基準は基準レベルで国際的な整合性は図られて」いるというような考え方から、従来の繰延法について見直しは行われないとのことです。