リスク分担型企業年金とはどんなもの
平成28年12月16日にASBJから実務対応報告第33項として「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」が公表されましたが、ここでいうリスク分担型企業年金とはどんなものかを簡単に確認してみました。
リスク分担型企業年金は、確定給付企業年金法に基づいて実施される企業年金のうち、確定給付企業年金法施行規則で定められた企業年金で制度導入時にリスク対応掛金を含めた事業主の掛け金負担を労使合意に基づきあらかじめ定めた上で、年金の給付額の算定に関して、毎事業年度における財政状況に応じて定まる調整率による調整を通じて給付額を自動的に増減する年金制度となっています。
リスク分担型企業年金における掛金は、標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額で構成され、リスク対応掛金とは、制度導入時にあらかじめ財政悪化リスク相当額を測定し、その水準(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額で、20年程度に1度の損失にも耐えうる水準)を踏まえて、事業主が追加で拠出する掛金とされています。
具体的な算定方式としては標準方式と厚生労働大臣の承認を得て算定する特別方式があるとされていますが、いずれの方式を採用するとしても、リスク分担企業年金制度では、制度導入時に事業主が拠出する掛金が固定される仕組みとなっています。
このリスク対応掛金の拠出方法としては以下の三つの方法があるとされています。
①均等拠出
5年以上20年以内の範囲においてあらかじめ規約で定められた期間(以下「予定拠出期間」)で均等に拠出する方法。
②弾力拠出
毎事業年度の拠出額を下限リスク対応掛金額(均等拠出で拠出する金額)以上、上限リスク対応掛金額(予定拠出期間ごとに定められた最短期間で拠出する場合の金額)以下の範囲内で拠出する方法。
③定率拠出
予定拠出期間において、リスク対応掛金額の未拠出額に15%以上50%以下の範囲内で規約で定めた一定の割合を乗じた金額を拠出する方法。
リスク分担型企業年金では、企業年金の財政悪化した場合でも事業主が負担するリスクが限定されるので、そこでカバーできない部分は従業員等(加入者)が負担することとなります。どの程度の負担割合とするかは前述の通り、制度導入時に労使間の話し合いによって決定することとなります。
給付額の調整は、従来の確定給付企業年金における給付算定式に財政状況に応じて定まる「調整率」を乗じて給付額を増減させることとなっています。例えば、積立不足が生じている場合は「(積立金+掛金収入現価)/調整を行わない場合の給付現価」で計算された調整率を用いて給付額が調整されることとなります。
リスク分担型企業年金制度の導入に関する「確定給付企業年金法」の改正は平成29年1月1日から施行になったばかりですが、今後どれくらいの会社で導入されるのか注目です。