子会社に対する高額外注費に行為計算否認規定が適用された事案
T&A master No.679のスコープに「子会社に対する高額外注費に行為計算否認規定を適用」という記事が掲載されていました。
この記事で紹介されていた事案は、インターネットサーバーの運営・提供及びコンサルティングなどを事業とする請求人(同族会社)が、ソフトウェアの企画・開発などを事業とする子会社に対して、受注単価を下回る価格で子会社に外注を行ったものについて、税務当局が行為計算否認規定(法法132①)を適用したことが争われたというものです。
新たな取引先を獲得するための手段として赤字受注となることはありえることですが、この事案では、「子会社外注単価を増額することにより子会社の繰越欠損金を利用して請求人の税負担を圧縮できるという顧問税理士の助言を受け」たことにより、外部からの受注単価3,750円に対して子会社への外注単価を5,250円、7,000円と増額していったとのことです。
ちなみに、この外注先の子会社自体も自ら作業を行っていたわけではなく、親会社から受けた仕事を外部の業者に1時間当たり3,500円で外注していたとのことです。なお、親会社で生じていた損失は、平成24年分約243万円、平成25年分約462万円、平成26年分約498万円とされており、それほど大きな金額ではありません。
このような取引について、税務当局は、請求人が計上した子会社に対する外注費が不当に高額であるとして行為計算否認規定を適用し、外注費の損金算入を否定しました。
一方で納税者側は、「子会社は繰越欠損金を抱えている関係会社であることから子会社への外注単価が業界における一般的な取引価格を逸脱するものでない限り、グループ全体で利益・節税を考えて取引を行うことは経済人として自然である」というような主張をしたとのことですが、審判所は子会社への外注単価が周辺地区におけるシステム関連業務の一般的な時間単価に比べて非常に高額で相場とかけ離れていること、当該子会社が請求人の外注先として実質的な役割が小さいことなどをから、受注単価を上回るような外注単価に経済的合理性は認められないとし、「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」と評価できるとし、税務当局の課税処分が適法であるという判断を下しました。
子会社で当該外注作業を行っていたとしたならば、結果はまた違ったものとなったのかもしれませんが、子会社は親会社の受注単価よりも低い価格でさらに外注に下請にだしているというような状況からすると、上記のような判断もあまり違和感はありません。
子会社の繰越欠損金を使うために、親会社側で赤字を計上して子会社で利益を出すというのは、いかにも危険な感じはするものの、上記の取引は顧問税理士の助言に端を発しているようなので、今後税務訴訟に発展するのだろうかというのは気になります。