未払配当金の表示科目は?
未払配当金は財務諸表上、どの科目で表示するべきですか聞かれて「未払金」と答えたものの、財規に何か書いてあったような気がしたので、確認してみると以下のように定めがありました。
(流動負債の区分表示)
第四十九条 流動負債に属する負債は、次に掲げる項目の区分に従い、当該負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、未払配当金又は期限経過の未償還社債で、その金額が負債及び純資産の合計額の百分の五を超えるものについては、当該負債を示す名称を付した科目をもつて別に掲記しなければならない。
一 支払手形
二 買掛金
三 短期借入金(金融手形及び当座借越を含む。以下同じ。)。ただし、株主、役員又は従業員からの短期借入金を除く。
四 リース債務
五 未払金
六 未払費用
七 未払法人税等
八 繰延税金負債
九 前受金
十 預り金。ただし、株主、役員又は従業員からの預り金を除く。
十一 前受収益
十二 引当金
十三 資産除去債務
十四 その他
さらに、確認してみると流動資産の区分表示(第17条)、有形固定資産の区分表示(第23条)、無形固定資産の区分表示(第28条)、投資その他の資産の区分表示(第32条)、繰延資産の区分表示(第37条)、固定負債の区分表示(第52条)には、上記のような但し書きは存在しないということにあらためて気づきました。
なぜ、未払配当金と期限経過の未償還社債だけ上記のような定めがされているのかですが、おそらく残高として大きな金額が残ることが通常ほとんどないからということだと推測されます。前事業年度の総会で決議された配当金あるいは中間配当金が年度末において大きく残高として残っていることは通常あまりないと思われます。ちなみに、中間配当の場合は支払開始日と四半期決算日が1ヶ月程度であるので年度よりも残高して残る金額は大きくなる可能性はあります(それでも上場会社であれば大部分は支払われていることが多いと思われます)が、四半期財規には財規のような定めはありません。
また、「期限経過の未償還社債」も、償還期限が来ているにもかかわらず支払っていないものということですので、異常な状態のものといえます。
しかも、独立掲記の基準値は「負債及び純資産の合計額の百分の五を超えるもの」とされていますので、金額的に重要性が高く、かつ、性質も異常と思われるので独立掲記が求められているということだと思われます。
では基準値以下の場合は、どの科目で表示するのかですが、「その他」に含まれる「負債及び純資産の合計額の百分の五を超えるもの」について独立掲記を求める条文が別にあることからすれば、未払配当金は未払金に含めるというのが自然だと考えられます。
一方で、期限経過の未償還社債ですが、財規の規定上、上記のとおり流動負債の区分表示ついて、1年以内に償還が予定されている社債という項目はあまりません。実務上は百分の五という基準とは関係なく「1年内償還予定の社債」として独立掲記していることが通常と思われますが、素直に財規に従えば「その他」に含めるという選択肢も考えられますが、金融庁の勘定科目リストでは「1年内償還予定の社債」もしっかりA勘定(内閣府令、開示ガイドライン、財務諸表等規則等、会計基準及び業法等の法令規則に設定の根拠を有する勘定科目)となっていますので、実質的には独立掲記が必須という位置付けにあると捉えるのが妥当と考えられます。
短期借入金が独立掲記項目となっているので、類似する短期償還社債も独立掲記すべきと考えられるものの、固定負債については社債と長期借入金がそれぞれ明示されていることからすれば、なぜ流動負債ではこのような形になっているのかはよく分かりません。
ちなみに「1年内返済予定の長期借入金」も同様にA勘定となっていますので、1年内返済予定の長期借入金を短期借入金に含め表示するというのも金融庁の想定とは異なるということになります。