IFRS任意適用目標と実績の差は?
そういえば2016年末までにIFRS任意適用300社を達成するなんていう目標があったなと思い出したので、久々に状況を確認してみることとしました。
経営財務3299号の「適時開示ニュース」によると、2017年2月15日にユニ・チャーム(東一,Pwcあらた)、メンバーズ(東二,アヴァンティア),横浜ゴム(東一,新日本)の3社がIFRSの任意適用を公表し、これにより経営財務の調査結果では、IFRSの任意適用会社(適用表明を含む)は134社となったとのことです。
既に冒頭の達成目標期限を約2ヶ月経過していますが、目標数の約1/3という残念な結果となっています。もっとも、IFRS任意適用企業にはを商社をはじめとする大企業が多いので時価総額ベースで考えるとかなり大きな割合を示すこととなります。
2016年7月に金融庁が公表した資料によれば、IFRS任意適用企業の時価総額は医薬品業では60%、情報通信では57%、電気機器では54%になるという結果が示されています(当時のIFRS任意適用企業数は118社)。
金融庁の資料において、調査時点においてIFRSの任意適用企業が存在しない業種は11業種とされています。大規模な会社でIFRSの任意適用が進んでいるという傾向からすると、一般的に意外な感じがするのは銀行業(93社)と保険業(13社)だと思われますが、これはIFRSを任意適用するのが非常に大変な業種だからということだと思われます。
2016年7月にIFRS財団モニタリング・ボードの議長に金融庁金融国際審議官の氷見野良三氏が選任されたことと、時価総額ベースではそれなりのプレゼンスを示せていることからもはや300社という社数目標はどうでもよくなっているのかもしれませんが、一方で、平成26年会社法改正により導入された監査等委員会設置会社に移行した会社はあっという間に700社以上という結果となっています。
結局のところ、上場会社の大多数ではIFRSを任意適用する必要性を感じていないということなのでしょう。
最後に、経営財務の記事でIFRSの任意適用を公表したとされいたメンバーズですが、監査法人がアバンティアという大手でない監査法人であるというのは珍しい点です。会計監査人を変更するというリリースはされていないので、同監査法人での任意適用だと推測されます。
同社の2016年3月期の有報を確認すると、IFRS任意適用のアドバイザリーフィーも特に発生していないようです。17年3月期の有報は6月にならないと確認できませんが、会社が自力だけで任意適用を実現したのだとすると大したものです。17年3月期にアドバイザリーフィーが発生していたとしても、準備期間が1年ということなので、なかなか大変だったのではないかと思います。