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決算短信における業績予想開示の傾向

2017年3月期から決算短信のサマリー情報の様式の使用が義務ではなり、これにより業績予想部分も記載が義務ではなくなりましたが、この件に関連した記事が経営財務3304号の「気になる論点(184)」で取り上げられていました。

FACT2017年4月号の「安倍首相が葬った決算短信の「業績予想」」によると、業績予想欄の削除は「当局(金融庁、東証)にとっても全く予想外のできごとだった」とされ、「東証の強い要請もあり自動的に公表されなくなるわけではないが、「記入欄があるか、ないかでは、記入へのインセンティブが違ってくる」(上場企業財務担当者)ため、業績予想を公表する企業は減少するだろう」と述べられています。

東証の見解としては、改正前においても業績予想が自由記載形式の様式が提供されており、各社の判断で必要に応じた開示が行われており、その位置づけは変わらないとのことですが、今後の動向を判断する上では現状がどうなっているのかを把握しておく必要があります。

業績予想について自由記載形式が認められるようになった際に東証から公表された「業績予想開示に関する実務上の取扱い」(平成24年3月21日)によると、平成22年3月期(2010年3月期)を対象とした調査では、上場会社のおよそ97%が、翌事業年度における「売上高」、「営業利益」、「経常利益」、「当期純利益」、「1株当たり当期純利益」及び「1株当たり配当金」の予想値を「次期の業績予想」として開示する形式を採用していたとされています。

その後、自由記載形式も認められるようになりましたが、東証が毎年公表している決算短信発表状況の集計結果によると、最近3年間の3月決算で自由記載形式を採用した社数は以下のとおりとなっています(経営財務3304号の「気になる論点(184))。

2014年 4社
2015年 7社
2016年 9社

ちなみに、業績予想の開示がない会社数は以下のとおりです。
2014年 76社
2015年 79社
2016年 89社

残りが表形式で業績予想を開示している会社で、2016年は2256社で、割合では約96%となっています。自由記載形式を採用している会社は、1桁で推移しており、採用している会社はないに等しいといえる状況です。

一方、業績予想の開示がない会社は、例えば、ソフトバンクグループ株式会社の2016年3月期決算短信では「現時点では業績に影響を与える未確定な要素が多いため、業績予想を数値で示すことが困難な状況です。連結業績予想については、合理的に予測可能となった時点で公表します。」というようケースがみられます。

ほとんどの会社が表形式で業績予想を行っているのはイメージどおりですが、従来のサマリー情報の様式では第2四半期と通期の業績予想が標準であった一方で、通期のみの業績予想を行っているという事例も相当数存在しました。

過去3年の推移でみると、通期のみの予想を開示している会社は以下のように推移しています。

2014年 325社
2015年 369社
2016年 427社

一方で、第1四半期のみ、第2四半期のみの予想を開示している会社もありますが、社数は1桁で推移しています。また、業績をレンジ形式開示している社数は10社程度で推移しており、いずれもマイナーな開示となっています。

こうしてみると、最近の傾向としては、通期のみの業績予想を開示するという傾向が顕著といえ、様式の使用が任意となったことにより、通期業績のみ開示するという会社の増加傾向は継続するのではないかと思われます。

なお、実質的に業績予想の開示が必須という状況下での分析ですので、今後も当てはまるのかは定かではありませんが、業績予想の非開示を選択した会社の理由はさまざまであるものの、以下の傾向にあると分析されているとのことです(経営財務3304号の「気になる論点(184)」)。

  1. 業績予想の開示を継続している企業と比較して、市場超過リターンも簿価時価比率も低く、市場からの評価は低い
  2. 業績予想を開示しないことにより、予想達成にこだわるような短期的な経営を回避できるという意見があるが、非開示とした企業の長期的な投資には変化は見られない
  3. アナリストによる業績予想のバラつきは、経営者による業績予想が開示されている場合に比べて大きくなり、非開示とした場合,カバーするアナリスト数は減少する

ちなみに本日7時30分に3月期の決算短信を公表した株式会社あみやき亭では、従来どおりの業績予想が開示されていました。

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