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譲渡制限付株式を役員に交付した場合の会計処理は?

適時開示を見ていると譲渡制限付株式報酬制度の導入のお知らせというものを比較的多く見かけますが、今後さらに増加していくのではないかと思います。

このような状況ですが、譲渡制限付株式を役員に交付した場合の会計処理はどうなるのかをよく理解していなかったので、会計処理を確認してみることにしました。譲渡制限付株式の交付についての会計処理を特に定めた会計基準はないと思いますが、会計処理については平成28年6月に経済産業省が公表した「新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引き」で述べられていました。

会計処理を理解する前提として、まず会社法における考え方を確認しておいたほうがよいと思いますので、会社法上の取扱をまず確認します。
会社法上、無償で株式を発行又は自己株式を処分することは認められていないので、理屈上は、まず役員に報酬を支給し(実際に金銭を支給するのではなく報酬債権が発生)、役員はその報酬債権を現物出資して、新株の発行又は自己株式の処分を受け、譲渡制限付株式を取得するということになっています。

監査役会設置会社を前提とすると、具体的には以下の手続きを経ることが必要となります。

  1. 株主総会において取締役全体に対する報酬総額を決議する。
  2. 取締役会において取締役個人に対する金銭報酬債権の付与を決議する。
  3. 取締役会において株式の第三者割当て(新株の発行又は自己株式の処分)を決議する。
  4. 会社と各取締役との間で特定譲渡制限付株式に関する契約(割当契約)を締結する。
  5. 払込期日において、各取締役による上記2.の金銭報酬債権の現物出資と引換えに、各取締役に特定譲渡制限付株式を交付する。

会社法上の取扱を踏まえ、会計処理は以下のようになることが考えられると経産省の資料では解説されています。

(1)報酬債権付与及び株式発行時
 借)前払費用等 XXX  貸)資本金等 XXX

 この仕訳は、以下の仕訳を1つにまとめたものと理解できます。
 ①報酬付与時
 借)前払費用等  XXX  貸)未払金(報酬債務) XXX
 ②役員による報酬債権の現物出資
 借)報酬債権 XXX         貸)資本金等 XXX
 借)未払金(報酬債務) XXX    貸)報酬債権 XXX

 譲渡制限付株式交付の際の報酬債権は、譲渡制限期間の報酬の前払の性質を有するため前払費用等で計上し、対象勤務期間にわたり費用計上することとなります。

(2)譲渡制限期間
 借) 株式報酬費用 XXX  貸)前払費用等  XXX

 特定譲渡制限付株式の交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうちその役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、費用計上(前払費用等の取崩し)することが考えられるとされています。

これは、ストック・オプションの会計処理のようなものなので特に違和感はありませんが、問題は、譲渡制限付株式を会社が無償取得した場合はどうなるのかです。この点については、「株式を無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)については、その部分に相当する前払費用等を取崩し、同額を損失処理することなどが考えられます」とされています。

したがって、仕訳としては以下のようになるようです。
 借)株式報酬費用 XXX  貸)前払費用等 XXX

借方は自己株式になるのかなとも思いましたが、最初に金銭債権を付与しているという建て付け上、見合う対価が得られないのは損失ということのようです。

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