厚労省HPで労基法違反で送検された企業名が公表されました
厚労省から本日(5月10日)、労働基準関係法令に違反し、最近半年間に送検された334社の社名を公表しました。ただし、ここで公表されたのは「各都道府県労働局が公表した際の内容を集約したもの」とされていますので、未公表の情報が新たに公表されたというわけではありませんが、中央省庁のHPで改めて公表されると注目度も高まりますので、違反を抑制する効果があるかもしれません。
「過労死等ゼロ」緊急対策の一環で、今後は送検を公表した日から約1年間掲載され、毎月更新されるとのことで、今回がその第1弾となります。
とはいえ、初回こそ、どんな会社でどのような内容があったのかを確認してみようと思いましたが、毎月更新されても内容を確認しようという気にはならないように思います。そういった意味では半年に一回位の方がむしろ効果的かもしれません。
さて、違反の内訳ですが、毎日新聞が配信した記事によると「企業が安全対策を怠った労働安全衛生法違反209件、賃金未払いなど最低賃金法違反62件、違法な長時間労働をさせるなどした労働基準法違反60件、労働者派遣法違反19件」となっています。
電通の過労死事件から、労基法違反といえば「違法な長時間労働」=ブラックというようなイメージが定着している感がありますが、公表事案のうちこのような違法な長時間労働は62件と公表全体の件数に占める割合は2割程度となっています。
今回の公表事案の中には電通も含まれており、事案の概要は「労働者2名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの」と記載されています。電通の場合はあれだけ報道されているので、これがどのようなレベルのものを意味しているのかは理解できますが、一方で東京労働局が書類送検した別の事案では「労働者5名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの」というものがあります。書類送検されているので、それなりに悪質なものなのだと推測されるものの、電通と同レベルのものと考えるべきなのかはなんともいえません。
また、同じく東京労働局が送検した事案の中に「知的障害のある労働者3名に、東京都最低賃金を下回る賃金しか支払わなかったもの」というものもありました。これも送検されているくらいなので悪質なものなのだと推測されますし、最低賃金法は遵守すべきものではありますが、障害者を雇用しようとしている会社だけに残念な感じがします。
神奈川労働局が送検した事案の一つに「三菱電機(株) 情報技術総合研究所」がありました。事案の概要は「労働者1名に対して36協定の延長時間を超える時間外労働を行わせたもの」というものですが、送検されたものの「H29.1.27不起訴(嫌疑不十分)」と最終的に不起訴となっており、このような事案も記載する必要があるのかは疑問です。
次に労働局別の記載件数をみると、東京労働局は11件、神奈川労働局は8件と送検件数は全体件数からすると意外に少ない水準となっています。どこが多いのかとみていくと愛知労働局が28件、大阪労働局20件、福岡労働局19件、兵庫労働局14件、沖縄労働局12件、広島労働局10件というところが件数としては多くなっています。
果たしてこのような企業名の公表がどの程度の効果を発揮するのかは今後の動向から判断するしかありませんが、個人的には送検された会社はその後3年間は従業員採用時にその旨と内容を開示しなければならないというような規制もあわせて行ったほうが意味があるのではないかと考えています。