仮想通貨の消費税の取扱い-平成29年度税制改正
1週間くらい前に(株)リミックスポイントが100株当たり10円相当のビットコインを株主に配布するというリリースを行いました。日経電子版の記事によると「上場企業が株主優待として仮想通貨を配るのは珍しい。」とされています。
ちなみに、会社の「当社株主に対する仮想通貨「ビットコイン」配布に関するお知らせ」というリリースでは意図してだと思われますが「優待」という表現は使用されていません。
ビットコインを使用していない株主にとっては、1単元当たり10円相当のビットコインをありがたがるとも思えませんし、特に手続きもなくクオカードやチケットが郵送されてくるのと異なり、このビットコインを受け取るためには、同社の子会社であるビットポイントジャパンに仮想通貨取引用の総合口座を開設しなければならないとされていますので、ますますハードルは高いものとなっています。
口座開設数を増加させる方法として考えたのだと思われますが、銀行にしても証券会社にしても広告を出して口座開設を促している中、10円相当のビットコインで口座開設をする株主がどれくらいいるのかは興味があります。会社にはこの制度に応じて新規に口座を開設した株主がどれくらいいたかを開示して貰いたいと思います。
さて、「ビットコイン」に代表される仮想通貨ですが、平成29年度税制改正によって消費税法上の取扱が改正されています。
仮想通貨は従来、消費税の課税対象として取り扱われることとされていましたが、平成29年度税制改正によって、仮想通貨の譲渡は非課税として取り扱うこととされています。
今のところ通常の事業会社では何ら影響がないと思われるものの、課税売上割合に対する影響はどうなるのかは気になるところです。
この点については、仮想通貨の譲渡は課税売上割合の計算上、「資産の譲渡等」に含めないこととされているので、結論としては何の影響もないという整理になっていました。
ちなみに平成29年度税制改正による改正は2017年7月1日から施行さられるとされています。このため、2017年6月30日までに購入した仮想通貨については消費税法上課税対象として取り扱われ、たとえ7月1日以後に売却する場合であっても課税売上対応分に区分して個別対応方式を適用することができるということになります。
一方で、6月末までに購入した仮想通貨を仕入税額控除の対象とした場合であっても、7月1日以後に売却した際の取引は非課税取引として取り扱われることとなります(消令附則(平29年)2)。
現状あまり多くはないと思いますが、上記の取扱からすると、消費税の課税事業者で仮想通貨を取り扱っている場合には今のうち仮想通貨を取得しておいた方がお得ではないかという感じがしますが、この点についても駆け込み需要を抑制する経過措置が定められています。
すなわち、6月30日時点で100万円(税抜)以上の仮想通貨を保有する場合において、その保有残高が6月中の平均保有数量よりも増加したときは、駆け込み購入による仕入税額控除を防止するため、その増加部分については仕入税額控除が認められないこととなっています(消令附則(平29年)8①)。