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現物株式報酬導入企業は累計130社に

T&A master No.704の巻頭特集でウイリス・タワーズワトソンのコンサルタントである伊藤竜広氏による「平成29年総会における現物株式報酬の導入事例分析」という記事が掲載されていました。

ウイリス・タワーズワトソンと三菱UFJ信託銀行の共同調査結果によれば、現物株式報酬の導入解禁(平成28年4月)から平成28年6月末までにおいては、導入企業は6社に留まっていたが、導入解禁後平成29年6月末までの累計導入社数は130社になっているとのことです。

前年において導入社数が少なかった理由については、経産省から最初に手引きが公表されたのが平成28年4月28日、その改訂版が公表されたのが6月3日であったので、6月の株主総会で導入するには準備期間が足りなかったためではないかと分析されています。

現物株式報酬を導入した130社を報酬類型別にみると、譲渡制限付株式が98社、パフォーマンスシェアが21社、パフォーマンスシェアユニットが14社となっているとのことです。

また、今年6月の株主総会で現物株式報酬制度を導入した会社は83社で、報酬類型別にみると、譲渡制限付株式が67社、パフォーマンスシェアが9社、パフォーマンスシェアユニットが10社とのことです。

上記の三類型のうち、パフォーマンスシェアについては、平成29年度税制改正によって、事前確定届出給与の対象から外され、かつ、業務連動給与の対象外とされたことにより損金算入が認められなくなっているため、採用されるケースは減少するのではないかと推測されます。なお、平成29年度税制改正は、交付の決議が平成29年10月1日以後になされるものから適用されるとされています。

上記のとおり、パフォーマンスシェアについては今度さらに採用されにくくなると思われますが、まだあまり馴染みがなく、違いがなんだったのかよくわからなくなるので、パフォーマンスシェアとパフォーマンスシェアユニットの違いを確認しておきます。

パフォーマンスシェアは、譲渡制限付株式に業績条件が付されたものです。したがって、対象期間の最初に株式が付与され、対象期間の終了・勤務条件の充足のみならず、一定の業績条件の達成度に応じて、譲渡制限の解除割合が変動するものです。

平成29年6月の総会でパフォーマンスシェアを導入したユナイテッドアローズの招集通知の議案(一部抜粋)には以下のように記載されています。

② 業績達成による譲渡制限の解除
 譲渡制限期間における当社の連結経常利益額および連結自己資本利益率(ROE)の達成度その他対象となる中期経営計画ごとに当社の取締役会においてあらかじめ設定した業績達成度(以下、かかる業績達成度に応じた譲渡制限を解除する条件を「業績達成条件」といいます。)に応じて、本割当株式について、譲渡制限期間が満了した時点で譲渡制限を解除し、その後、対象取締役は、譲渡制限を解除された本割当株式を自由に譲渡等
できるものといたします。ただし、対象取締役による株式保有を促進する観点から、本割当株式の一定割合については、業績達成度にかかわらず、原則として譲渡制限期間が満了した時点において譲渡制限が解除されるものといたします。また、かかる譲渡制限の解除は、原則として、対象取締役が、譲渡制限期間中、継続して当社の取締役の地位にあることを条件といたします。 なお、対象取締役は、譲渡制限期間が満了した時点において上記の定めに基づき譲渡制限が解除されていない本割当株式を無償で当社に返還(譲渡)するものといたします。

一方、パフォーマンスシェアユニットは、対象期間の始点では、予め基準額(または基準株式数)のみが定められており、評価期間の終点で株式が付与されるというものです。パフォーマンスシェアユニットの場合、支給対象者に発生する所得税の納税資金を考慮して、業績によって確定した金額の一部を金銭で支給するケースもあるとのことです。

平成29年6月の総会でパフォーマンスシェアユニットを導入した富士通の議案では以下のように記載されています(一部抜粋)

【ご参考】本制度の内容
(1)制度の概要
当社は、あらかじめ定めた3年間の中長期業績目標の対象期間開始時に、業務執行取締役に対して、役位に応じた基準株式数、業績判定期間(3年間)および中長期業績目標等を提示します。そして、業績達成水準に応じて基準株式数に一定係数をかけて算出した数の当社株式を年度毎に計算し、業績判定期間の終了をもって、対象者毎にその合計株式を割当てます。このとき、業務執行取締役には割当株式の時価相当額の金銭報酬債権を支給し、業務執行取締役は、この金銭報酬債権を、割当てられた株式に対し出資して、当社株式を取得します。
取得した当社株式は、インサイダー取引規制に係らない限り、任意に譲渡することが可能となります。
(中略)
(3)業績達成水準の指標および係数
当社の連結決算における売上収益と営業利益を指標として、あらかじめ定めた中長期業績目標に対する業績達成水準に応じて一定の範囲で係数を設定します。業績達成度合に応じた係数があらかじめ設定した下限未満となる場合には株式の割当てはされません。また、業績達成度合に応じた係数があらかじめ設定した上限以上となる場合には、基準株式数にあらかじめ設定した係数の上限を乗じた数の株式を業務執行取締役に割当てます。
(以下省略)

新たに現物株式報酬を導入する場合、従来の報酬との関係をどのように設計しているのかについては、従来の報酬枠の内枠で現物株式報酬を導入しているケース(SUBARUなど)、従来の報酬枠に加えて別枠で決議しているケース(富士通など)、従来の報酬枠を減額し別枠で決議しているケース(ユナイテッドアローズなど)などがあります。

現物株式報酬を導入した企業の業績が、未導入企業の業績を上回るのかについては、10年くらい実績がでてみないとなんともいえません。投資家として気になるのはインセンティブが変な方向に作用しないのかという点ですが、この点に関して、ヤマハの制度では、重大な不正会計や巨額損失が発生した場合には、役員毎の責任に応じて、累積した譲渡制限付株式の全部又は一部を無償返還するクローバック条項が設定されているとのことです。

このような条項は、今後の事例でも織り込まれることが増えてくるのではないかと思われます。

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