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公募増資を巡るインサイダー取引の裁判で国側が高裁でも敗訴

T&A master No.706号に”公募増資巡るインサイダー取引と認めず”という記事が掲載されていました。

この記事によると、この事案は、証券空き者の営業員がT社(上場企業)による公募増資の決定(重要事実)を知った上で資産運用コンサル会社役員(一審原告及び被控訴人)に伝達し、その公表前に被控訴人がT社の株式を売りつけたとして金融庁が課徴金納付命令をしたのに対して、被控訴人がその取り消しを求めたものです。

一審では、證券下位者の営業員が同社の証券アナリストや募集担当者との接触により、その職務に関し同社が引受契約の締結交渉をしているT社において公募増資を行うことが決定されたと知ったとは認められないとして、コンサル会社役員に対する課徴金納付命令は違法であると判断されました。

インサイダー取引で国側が負けたなんて事案があったかなと確認してみると、2016年9月1日の日経電子版の記事に「インサイダー巡る課徴金命令、初の取り消し判決 東京地裁 」という記事がありました。

この記事では以下のように報道されています。

証券会社社員から得た東京電力の公募増資に絡む内部情報でインサイダー取引をしたとの理由で金融庁が出した課徴金6万円の納付命令を不服として、金融コンサルタント会社役員の50代女性が起こした訴訟の判決で、東京地裁(林俊之裁判長)は1日、命令を取り消した。
金融庁によると、証券取引法(現金融商品取引法)に基づく課徴金制度が2005年に導入されて以降、納付命令を取り消す判決は初めて。
林裁判長は判決理由で「証券会社社員は東京電力の公募増資の決定や公表日を事前に知っていたとは認められず、納付命令は違法」と指摘。「社員は市場のうわさなどから推測した」とした。
判決などによると、女性は社員から提供を受けた内部情報を基に10年に同社株200株を空売りしたとして、金融庁から13年に課徴金6万円の納付命令を受けた。
同庁は「主張が認められなかったことは遺憾。判決内容を精査し、控訴を含めた対応を検討する」としている。
(日経新聞 2016年9月1日)

200株の売り付けという細かな取引であっても取り締まりの対象としながら、上記が納命令が取り消す初の判決であったという証券等取引委員会の仕事ぶりには頭が下がるばかりです。以前受けたとことのある取引所が行っているインサイダー研修では、重要事実が公表された直前の取引はすべてチェックするためインサイダー取引は絶対にバレるといっていましたが、本当のようです。

国は地裁の判決に対し、控訴し平成29年6月29日に高裁判決が下されましたが、結論としては、被控訴人に対する課徴金納付命令は違法という地裁と同様の判断を下したとのことです。

控訴審において、国側は、「会社関係者が法人内の複数の断片的な情報を取得しそれらを組み合わせることによって重要事実を認識するに至った場合であっても重要事実を知った者といえ、その認識は未質的なもので足りる」とし、「証券会社の営業員が同社の証券アナリスト及び募集担当者から情報収集を行い、公募増資に係る重要事実を知っていたから、課徴金命令は適法であると主張した」とのことです(T&A master No.706)。

これに対して裁判所は、「重要事実を構成する主要な事実を単に認識したというだけでは足りず、契約交渉等をする役員等が知った重要事実が法人内部において他の役員等に伝播したものと評価することができる状況のもとで、重要事実を構成する主要な事実を認識した場合であることを要すると判断した」とののことです(同上)。

なんだか難しいことが書いてありますが、要は、重要事実を漏らしたといえるレベルでなければならないということのようです。この事案では、証券会社のアナリストが営業員に対して公募増資について「可能性は否定できない。やってもおかしくない」と回答したそうですが、この点については「どのような趣旨で回答したのかなどの記載が質問調書にないから、T社が公募増資を行う決定を下可能性を暗にに伝えるものであったなどとは認められない」とされたとのことです。

アナリストであれば、インサイダー情報を知っていなくても回答しそうな内容ですので、確かにこれだけだと単なる一般論の域をでない感じがします。結果として国側の敗訴となりましたが、一般人としては、証券会社が金持ちの顧客を優遇しているのではないかと疑いたくなるので、外観的に怪しく見えるこのような事案に積極的にチャレンジした姿勢を個人的には評価しています。

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