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有償新株予約権の会計基準はトーマツの社内通達が原因?

昨日取り上げた実務対応報告公開草案52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」に多数の反対コメントが寄せられたという件に関連して、週間東洋経済の2017年9月23日号に関連する記事が掲載されていました。

記事のタイトルは「会計基準草案が”炎上”ちらつくトーマツの思惑」というものです。1枚の短い記事ですが、いくつか興味深いコメントなどが取り上げられていました。

前回の記事でも反対203件というのは記載しましたが、賛成はわずか6件で、「賛成したのは日本公認会計士協会やトーマツ、新日本、あずさといった大手監査法人のみだった」とのことです。会計士協会や大手監査法人が賛成するのはそうだろうという気はしますが、上記の記事を読んで、あらた監査法人は意見を提出していないのかと気になって確認してみると、あらた監査法人からの意見はありませんでした。なかなか興味深い発見でした。

また、一般社団法人新経済連盟はA4用紙8枚分の反対文書を提出したと上記記事に記載されていたので、確認してみると確かに長々とした意見が提出されていました。この記事では新経済連盟の小木曽稔・政策統括のコメントして以下のように記載されています。

利益圧迫を嫌がり予約権を発行する企業が激減しかねない。この草案は政府の成長戦略と齟齬する。即刻廃案にすべきだ。

会計基準はあくまで理論なので、政府の政策を持ち出しても仕方がないだろうというところではありますが、実質的に株式市場に費用を押しつけられる有償新株予約権の会計処理を見直すとは何事だということでしょう。

また、前回はASBJは多数の反対意見に関わらず、基準を見直す方針はないという記事を紹介しましたが、この記事ではASBJの小賀坂敦副委員長が報酬の側面もあると主張した一方で、”「成長を阻害する、といった多くの反対意見もあり、慎重に議論しなければならない」と緊張した面持ちで語った”とされています。

政府の成長戦略と齟齬すると言われてしまうと、金融庁の顔色を窺う大手監査法人も意気消沈ということもあるかもしれません。

この記事では”同予約権が「報酬」ではなく「投資」であることは、ほかの会計ルールからも容易に読み取れる”として、日本監査役協会の「実施要領」に、”「有償ストックオプションは、新株予約権を報酬として付与するものではない」と明記している”と述べられています。

日本監査役協会の「実施要領」は、一般に公正妥当と認められた会計基準なの?と言いたくなりますが、有償新株予約権を「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品」と考えて会計処理するのか、ストック・オプションの範疇で考えて会計処理を求めるのかなんてことは普通の人には理解しがたいのは当然です。

そして最後に、この草案がなぜ持ち上がったのかとして、2014年12月に審議が決まった経緯について、上記記事では以下のように述べられています。

関係者によれば、その半年前、大手監査法人のトーマツが予約権を「報酬として会計処理すべき」との社内通達を出した。これにはすでに発行済の企業の多数が反発。結局、トーマツが監査を担当している上場企業で予約権を報酬として会計処理した会社は皆無だ。
トーマツは14年の諮問会議に本件を議論するように働きかけた。
冒頭の会計士は「社内通達が正しいことを示すためだったのではないかと」指摘する。

 
実際トーマツにそのような社内通達があったのかはわかりませんが、会計基準上解釈が不明確な部分について、法人としての解釈指針を示すということは確かにあります。ただし、他の基準等で処理されているものを敢えて法人内部の勝手な通達でひっくりかえすのは、やり過ぎだと思います。

解釈に疑義があり、かつ他の実務慣行が既に形成されている特定の会計処理が間違っているというのであれば、前提となる基準が必要で、そういった意味において、基準化を働きかけたトーマツの選択は妥当だと思われます。

特に最近は、各法人とも品質管理の一環として社内の審査が厳しくなっているようで、品質がどうこうと自己満足に浸っているように感じられますが、勝手な理屈で被監査会社にあれこれ言う前に、きちんと基準を作ってもらいたいというのが実務担当者としての希望です。

ある日突然、「有給休暇引当金を計上して下さい」なんて言われるのではないかと思えて仕方がありません。

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