東証一部上場承認翌日に開示したベステラの2Q決算が・・・?
昨日、2015年9月に東証マザーズに上場したベステラが、東証一部へ市場変更を承認されたという適時開示を見ました。同社の業績は詳しく見ていませんでしたが、りんごの皮むき工法がメディアで取り上げられることも多く、順調にステップアップしてるのだなと思っていました。
そして本日の適時開示でベステラの第2四半期決算短信が公表されているのを見つけました。昨日上場承認で今日決算発表かと気になったので短信を確認してみると、おや?という内容でした。
売上は前年同期比12.3%増の21.4億円となっているものの、営業利益は前年同期比29.5%減の163百万円と売上の伸びも考慮すると大幅の減益となっています。
同社は2Qの業績予想を開示していないので、当初計画との差については確認できませんが、合わせて開示されている決算説明資料によれば、「通期業績は当初計画通りに進捗しているため、業績予想に変更はありません」とのことです。
通期業績予想では売上高が前年比36.3%増の57億円、営業利益が前年比41.9%増の564百万円、経常利益は前年比31,8%増の533百万円となっています。
単純に残りを計算すると下期の売上高は35.6億円、営業利益401百万円が必要となります。
上期の営業利益率が約7.6%に対し、下期は約11.3%が「当初計画通り」という計算です。過年度は長期工事の割合が大きかったようなので、単純に比較してよいものなのかは難しいところですが、平成28年1月期の営業利益率が約11.6%なので、不可能ともいえない水準ではあります。
とはいえ、営業利益率は平成28年1月期約11.6%→平成29年1月期約9.5%→平成30年1月期上期約7.6%というトレンドからすれば、利益率を回復させる勝算が本当にあるのかは疑わしく思えてしまいます。
決算説明資料によれば、増収要因55百万円に対し、外注費増加▲54百万、人件費増加▲26百万円となっています。説明文には「第2四半期に完成した大型の工事において、外注費率及び当社人件費率が相対的に高かったため、減益となっておりますが、通期業績予想における利益率は例年並みであります。」と記載されています。
「減益となっておりますが、通期業績予想における利益率は例年並みであります。」という部分の意味するところが理解しにくい表現となっています。投資家を煙に巻こうという意図がないという前提に立てば、通期の利益率は例年並みに回復する見込ということだと思いますが、あえてこのように表現している意図が隠れているのかと勘ぐりたくなります。
売上についても、下期の水準がかなり高くなっている感じですが、「工事の収益計上基準について」というスライドで、今期以降に開始した工事から、大型工事も原則として工事進行基準を適用している旨が記載されています。
確かに、短信で開示されてる「生産、受注及び販売の状況」をみると、前期繰越工事高に対する当期完成工事高の割合が前年同期は約56%に対して、当2Qは約91%と著しく増加しており、工事進行基準が適用される工事が増加した影響がでているのではないかと推測されます。
従来完成基準で収益認識していた工事が進行基準で収益に認識されることとなれば、従来よりも売上計上時期が早まるので、下期の売上も達成可能というロジックなのかもしれません。とはいえ、「当社の完成工事高は、顧客(施主)の設備投資計画に応じた季節性があります。今期は、第4四半期会計期間に計上される割合が高くなる見込であります」とされており、進行基準を前提とすれば、これは第4四半期の原価投入が増えるということを意味すると考えられますので、上期同様に外注費等により利益が圧迫されることが懸念されます。
たまたま収益性がよくない工事があっただけなのか、各種工事原価の高騰を受注額に反映できていないだけなのか、3Q、4Qの短信に注目したいと思います。