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着替え時間の労働時間性が争われた最近の判例-イオンディライトセキュリティ事件

労政時報3939号の労働判例SELECTで「イオンディライトセキュリティ事件 市場地裁平成29.17判決」が紹介されていました。

この事案は、警備業を営むY社(被告)の従業員として軽微業務等に従事しているX(原告)が、勤務時間中の仮眠時間・休憩時間および着替え・朝礼に要した時間は労働時間に当たるとして、当該時間分の未払い割増賃金および労基法114条に基づく付加金請求を行ったというものです。

着替えに要する時間が労働時間に該当するのかについては、以前「着替えの時間は労働時間として取り扱われるか?」で記載していますが、それほど時間がかかるとは思われない制服に着替えるような時間の取扱を確認するにあたり、上記の判例では着替えの時間が明示されている点で参考になります。

すなわち、「着替え及び朝礼に要した時間」の判断は以下のとおりであったとのことです。

労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内ですることを使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされたときは、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労基法上の労働時間に該当すると解される。
Xは、S点で朝礼への出席及びこれに先立つ制服への着替えを義務付けられ、これらを事業場内で行うこととされていたというべきであって、これらに要する時間は、Y社の指揮命令下に置かれていたものと評価できる。Xは、朝礼に25分を、着替えに10分を要し、これらの時間は社会通念上必要であったと認められるから、所定労働時間の労働に加えて、さらに1日当たり合計35分が労基法上の労働時間に該当する。

朝礼については会議のようなものなので、参加を義務付けられていれば労働に入る前の準備行為とは考えられず、かつ、時間も25分もやっているのであれば労働時間として取り扱われるのは当然と考えられます。一方で、制服への着替えのようにそれほど時間がかからない着替え時間については、準備行為として労働時間とはならないというような見解も従来は見受けられました。今後も学説として主張されるのではないかと思いますが、実務的には今年1月20日に公表された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の「2 労働時間の考え方」において「例えば、次のような時間は労働時間に該当します」として「①使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や・・・」と記載されているので、着替えの時間は準備行為のため労働時間として取り扱わないという主張は難しくなっていると思われます。

上記の判決では、朝礼の25分があったという影響もあるのではないかと考えられるものの、争われた着替時間は10分とありがちなレベルの時間(出勤して所定の場所で着替えて職場で作業ができる状態になるまでが10分であれば特に時間がかかっているという感じはしません)での判決であるという点は注目に値します。上記のガイドラインで明記されたとはいえ、短い着替えの時間は労働時間としなくても問題ないというような考え方は実務上、少なからず残っているように感じます。

10分で労働時間性が認められることが上記の判例で確認されているので、もはや時間の長短の問題ではないので5分なら大丈夫ということにはならないと考えられます。とはいえ、ダラダラ着替えている時間が労働時間として取り扱われるとすると、会社側としては困ってしまいますし、着替えを監督するのは色々な問題が生じる可能性を考えると行いにくいように思いますので、平均的にかかるであろう時間を着替えの時間として労働時間に加算して取り扱うようにするというのは現実的な取扱いの1つではないかと考えられます。

以前も書きましたが、業種によっては労働力不足が深刻化しているようですので、些細な問題であればあるほど、会社としては争う価値はないと思われますので、割り切って処理することも必要になってきていると考えられます。

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