譲渡制限特約付債権の譲渡にかかる民法改正
2017年6月2日に公布された「民法の一部を改正する法律」により民法の改正が行われましたが(施行は平成32年予定)、今回の改正において、債権の譲渡制限特約が付された場合であっても債権譲渡(譲渡担保)が有効であるとの見直しが行われています。
今回の改正の目的は、中小企業において債権譲渡を活用した資金調達を容易にするということにあるようです。つまり、現行法においては、譲渡制限特約が付された債権の譲渡には債務者の承諾が必要とされていますが、資金繰りの観点から債権譲渡によって資金を調達しようとしても債務者の承諾が得られないということも少なくありません。
そこで、今回の改正によって当事者間で債権の譲渡制限特約が付されていても債権譲渡の効力は妨げられないこととされました(改正民法466条)。一方で、債務者は、譲渡制限特約が付された債権が譲渡された場合であっても、元の債権者に弁済することにより譲受人に対抗することができるとされています。
つまり、譲渡制限特約付き債権の債務者は、元の債権者に弁済すれば、真の債権者が誰であれ免責されるということになります。これにより、債務者が二重弁済を迫られるというような不利益を被ることはないので、弊害はないだろうという理屈だと思われます。
とはいえ、債務者からすると、譲渡制限特約を付けている債権を特約に反して譲渡してしまっている相手方はけしからんということになるのではないかという気はします。
債務者(大企業)、債権者(中小企業)という構図だとした場合、場合によってはこれを理由に契約解除というようなことも考えられなくはありません(特に取引先の絞込などを検討している場合には材料となり得ます)。
この点、「法務省は、譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたときは、債権譲渡は必ずしも特約の趣旨に反しないとしている」(T&A master No.711)とのことです。これは、上記のとおり、元の債権者に弁済すれば免責されるため、弁済の相手方を固定することへの債務者の期待は保護されているということによります。
したがって、債権譲渡されても債務者に特段の不利益はなく、契約違反にはならないという見解を示しているとのことです。
上記はあくまで「譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたとき」を前提とした場合の見解なので、双方に取引があって債権債務を相殺したいとか、素性のよくない会社に勝手に債権譲渡されると困るというような目的があったとすると、この理屈は成り立たないということになります。
そのため、民法改正後は、譲渡制限特約の目的を当事者間で明確にしておくということも必要になってくるものと考えられます。
参考書籍も増えてきているので、そろそろきちんと改正民法をフォローしてみようと思います。