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クラウドサービスの会計処理

経営財務3335号にトピックスプラスとして「クラウドサービスの会計処理」が取り上げられていました。

ソフトウェアの会計処理を定めている「研究開発費等に係る会計基準」および「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」は、公表後改正されているものの、ベースは平成11年に公表されたものとなっていることもあり、クラウドサービスのようなものをどのように処理すべきかを考えるにはいまいちしっくりこない部分があると感じます。

経営財務の記事では、ユーザー側の会計処理について、まず、”クラウドサービスの場合,ユーザーはソフトウェア自体を購入するわけではなく、当該ソフトウェアによって提供される「サービス」を購入していると考えられている。”と記載されています。

こう書かれると納得してしまいそうですが、パッケージ製品として会計ソフトやExcelのようなソフトを購入した場合も、ソフトが格納されているCD-ROMが欲しかったわけではなく、それを利用したくて購入するのが通常なので、よくよく考えるとそれほど大きな違いはないように感じます。

また、「クラウドサービスには、当該ソフトウェアが提供するサービスだけではなく、システムを運用するための保守契約なども含まれることが一般的であり、ユーザーはこれらを含めた全体のサービスに対して利用料を支払っているといえる。」と述べられています。これは確かに、そのとおりで、パッケージソフトであれば、ソフト+保守という組み合わせはよくありますが、運用は自分で行うことが通常となります。

とはいえ、自社でサーバーを管理できないというような会社に対して、パッケージソフトを提供している会社が、データーセンターと契約し、自社のソフトをインストールし、運用環境まで面倒をみるとした場合に、ソフトウェアとデータセンター利用料と運用費用として顧客に請求した場合と、合計金額は変えないように5年契約などにしてクラウドサービスの名称で販売した場合でソフトウェアの処理は異なるだろうかと考えると、両者でソフトウェアの取扱が異なるとするのにはやや違和感が残ります。もっとも上記のようなケースでは、5年を超えた場合、パッケージソフトで購入していれば通常無期限で使用可能なところ、5年契約の場合は5年しか使用できないというような違いはあります。

この点に関連して、経営財務の記事では「ソフトウェアの使用期限が定められていない場合等において、実質的に購入しているのと変わらない、と判断される場合などは、ソフトウェアを資産計上して一定期間(原則5年以内)にわたり償却することも考えられるという」と述べられています。また、「契約内容や利用実態によってファイナンス・リースの要件に当てはまり、費用処理ではなく資産計上が必要となる可能性が出てくる場合もあるという」とも述べられています。

このほかクラウドサービスの場合は顧客が料金を支払わなかった場合にはサービスの提供をストップすることができますが、パッケージソフトの場合、保守への加入が必須とされているにもかかわらず保守料金を支払っていなくてもソフト自体は使用し続けることができるというケースも比較的多くみられるという違いはあります。

ただし、パッケージソフトであっても一定期間の期間ライセンスで、一定期間を経過すると機能の一部あるいは全部が使用できなくなるというようなものもあると思いますので、そのようなソフトとクラウドサービスを比較すると両者は類似してきます。さらにいえば、期間ライセンスと無期限のライセンスの双方を販売しているというようなケースも考えられます。

個人的には、市場販売目的のソフトウェアと自社利用ソフトウェアという区分をそろそろ見直したほうがよいのではないかと感じています。自社利用ソフトウェアは「将来の収益獲得または費用削減が確実に認められる」場合に資産計上要件を満たすこととされていますが、ここに収益獲得が入っていることが話をややこしくしていると思います。

事例を確認してみると、最近TVCMも見かける楽々精算を提供している(株)ラクスは、同社のHPを確認してみるとパッケージで提供している製品はなく、すべてクラウドサービスでの提供となっているようです(会計方針の注記にも自社利用ソフトの償却についての記載しかありません)。

平成29年3月期の有価証券報告書を確認してみると、CF計算書上無形固定資産の取得による支出は平成29年3月期が約1600万円、平成28年3月期が約900万円となっており、大々的に宣伝しているわりに資産計上額は大きくありません。研究開発費が大きいのではないかとも思いましたが、研究開発費のPL注記はなく、研究開発活動の記載も「該当事項はありません。」となっています。

一方で、税効果関係の注記を見ると「減価償却超過額」が平成27年3月期は約8200万円、平成28年3月期約9300万円に対し、平成29年3月期は約1億900万と増加傾向にあり、会計上は資産計上せずに税務上のみ資産計上しているという可能性は考えられます。

次に、やはりTVCMで見かける勘定奉行を提供しているオービックビジネスコンサルタントはどうなっているのかと確認してみました。勘定奉行シリーズでクラウド提供が始まったのは最近のはずですが、同社の有価証券報告書を2003年まで遡って確認してみても、会計方針に市場販売目的のソフトウェアの記載はなく、自社利用ソフトの記載のみしかありませんでした(OBCがソフトを作っているのかとも思いましたが、OBCも同様に自社利用ソフトの記載しかありません)。

同社の場合は、最近の研究開発費の金額が22億~23億円で発生しており、平成29年3月期の有価証券報告書の研究開発活動には「製品開発投資は、オンプレミス&クラウド時代において企業が求めるあらゆるシステムのニーズに応えられる「企業向け ERP &EB パッケージシステム・サービス」の開発に集中しました。」というような記載がなされており、パッケージ製品の研究開発も行っていると記載されています。

税効果の注記で明示されている項目の中には減価償却超過額は存在せず(ただし固定資産の「その他」は4億円程度と大きい)、パッケージの開発費用がどのように取り扱われているのかはよくわかりませんが、会計方針の注記から市場販売目的のソフトウェアとして資産計上して償却をおこなっているということではないようです。

結局各社各様ということなのかもしれませんが、無駄な議論をしなくてすむように、基準が見直されることを期待します。

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