「実務補習生の不適切な行為について」って何が?
本日、会計士協会から”お知らせ 「実務補習生の不適切な行為について」”なるメールが配信されてきました。
何だろうと確認してみると監査法人、公認会計士事務所代表者向けに発信された文書で、冒頭に「最近、実務補習を受講している実務補習生による不適切な行為が、相次いで報道されています」と記載されています。
具体的に何があったのかは記載されていませんが、きちんと監督・教育をするようにという内容で締めくくられています。
相次いで何があったのだろうと確認してみると、ここ1ヵ月くらいで以下の二つが報道されていたということがわかりました。
1.トーマツの職員がTACの教材や講義音声データを不正コピー
朝日新聞が2017年10月26日に「トーマツの会計士志望職員ら、予備校教材を不正コピー」で報じでは以下のように報じられています。
大手監査法人「トーマツ」(東京)に勤め、公認会計士を目指す職員らが、資格試験の予備校の教材や講義の音声データを不正コピーし、受験予定の同僚計15人で使っていたことがわかった。トーマツは予備校に謝罪し、24日付で15人を降格処分などにした。
トーマツによると、15人は今年12月の公認会計士の最終試験を受験予定。このうち1人が6月に同僚から受講料約20万円の一部を集めて資格試験予備校「TAC」に入校。手に入れた教材や講義の音声データを同僚間で共有して使っていた。職員らはトーマツの調査に「受講料負担を軽減したかった」などと話したという。
(朝日デジタル2017/10/26)
この件について書かれていた”会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)”で引用されていた「アウトサイダーズ・レポート」の記事によると、「取りまとめ役のスタッフが7月末頃に印刷業者に発注、8月9日までに全員にTACの海賊版テキストが送付された。」とされています。さらに「TACの講座は1人あたり十数万円以上の料金がかかるが、海賊版テキストは1人あたり1万数千円で販売されていた模様。」とも記載されています。
上記で記載されていることが本当だとすると、印刷会社まで使用して海賊版テキストを作成しているので相当悪質と思われます。3次試験と呼ばれていた頃も、基本的に全員TACなどに通っていましたが、テキストをコピーして節約しようなんていう輩は周りには見当たりませんでした。様々なサービスがインターネット経由で利用しやすくなって個人で印刷業者に発注なども行い易くなったということなのか、シェア経済が同然の世代が勢い余って不適切なシェアをしてしまったのかは定かではありませんが、受講料くらいは払おうよという気はします。
なお、トーマツは上記が判明した15名を降格処分としたとのことです。この15名は、よりにもよって信用第一の金融機関の与信業務を担当する監査チームだったそうで、このクライアントが果たしてどのような対応にでるのかも興味深いところです。降格されれば給料も下がるだろうし、パートナーになるのが難しくなっている中では出世の目もなくなったといえるのではないかと思いますのでかえって高くついたと言えるのではないかと思います。
2.論文盗用
これまた朝日新聞で2017年11月12日に「コピペ・引き写し…会計士の卵12人、論文盗用で処分」という記事で報道されています。
今の制度をよく知らなかったのですが、上記記事によると「実務補習では課題研究として、論文を3年で6回提出して単位を取得する。」ということになっているそうです。
そして過去にも論文の盗用があったため、今回の論文をチェックしたところ論文の盗用が見つかり、実務補習を受ける補習生12人が処分されたそうです。
この記事によれば、あずさと新日本が各3名で厳重注意、トーマツは1名で降格処分、Pwcあらたは人数を明らかにしていないとのことです(最大5名ですが・・・)。
この他、実務補習の代返も発覚したとされ、トーマツは、カードを渡して代返を頼んだ補習生1人を3日間の出勤停止とし、新日本は代返を依頼された実習生1人を厳重注意処分にしたそうです。
トーマツはテキストコピーの件もあり、処分が厳しめとなっています。ただ、代返で出勤停止3日だとすると、テキストコピーはより長い出勤停止であってもおかしくないような気がします(こちらは違法行為だし・・・)。
このような事案に対して、「試験の簡素化で合格者の質も下がっているのではないか」という意見もあるようですが、個人的にはあまり関係ないかなと思います。昔も論文提出のようなものがあって、インターネットなどで容易に文献が見つかる状況であれば、これは同様に起こりえたのではないかと感じます。
また、代返については、今の時代、実務補習費用とか会計士協会費とか結構高い金額を徴収しているのだから、指紋認証でも顔認証でも取り入れればいいじゃないという気がしてなりません。
たまに会員の懲戒処分が公表されますが、今回のようなケースでも公表対象とすれば、今後こうした事態は減少するのではないかと思います。