平成30年度税制改正大綱が決定(その1)
2017年12月14日に自民・公明の与党は平成30年度税制改正大綱が決定しました。
主な内容が税務通信3487号でまとめられていたので、中でも広く影響がありそうな項目をピックアップしてとりあげます。
税務通信の記事によると、平成30年度税制改正大綱には、「例年にはない大胆な税制措置が織り込まれた」とされ、「”アメとムチ”を使い分ける政策」が導入されているとされています。
1.法人課税関係
「生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを後押しする観点から“アメとムチ”の税制パッケージ(賃上げ・生産性向上のための税制)」として以下の二つを実施するとされています。
(1)所得拡大促進税制の改組(アメ?)
(2)情報連携投資等促進税制の創設(アメ)
(3)租税特別措置法の適用要件の見直し(ムチ)
まず、所得特大促進税制の改組ですが、「平成30年4月1日から33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、次の①②の要件を満たせば,給与等支給増加額の15%を法人税額から控除(上限は法人税額の20%)できるようにする」とのことです。さらに、「③の要件を満たす場合は、控除率を5%上乗せし合計20%の税額控除(上限は法人税額の20%)を認める」とされています。
現行の制度では、税額控除限度額は雇用者給与等増加額の10%(中小企業者等である場合は20%)が上限とされていますでの、中小企業者等以外にとっては控除限度額が増額されるという意味ではアメの制度といえます。
しかしながら、一方で控除を受けるための上記要件①~③は以下のとおりとなっています。
①平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること
②国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること
③教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であること
③は上乗せの制度なのでとりあえずおいておくとして、まず①の要件として平均給与等支給額が前年度比3%以上増加となっています。従来の判定に用いられていた「増加促進割合」は平成29年3月期で4/100、それ以降は5/100となっていたので、要件が緩和されたのかと思ってしまいますが、増加促進割合は「雇用者給与等支給増加額÷基準雇用者給与等支給額」で計算されることとされています。
そして「基準雇用者給与等支給額」は「平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう」となっていますので、平均給与等支給額が前年度比3%以上という要件のほうが要件としてのハードルは高いのではないかと思われます。
ただし、平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額については、計算の基礎となる継続雇用者の範囲を見直し、当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとするほか、所要の措置を講ずるとされています。
継続雇用者が当期および前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者とされることにより、計算自体は現行よりも煩雑さがかなり軽減されると思われます。
次に、「国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上」という全く新たな要件が加えられました。
ここで、「国内設備投資額」とは、「法人が当期において取得等をした国内にある減価償却資産となる資産で当期末において有するものの取得価額の合計額をいい、上記の「減価償却費の総額」とは、その法人の有する減価償却資産につき当期の償却費として損金経理をした金額(前期の償却超過額等を除き、特別償却準備金として積み立てた金額を含む。)をいう」とされています。
なお、中小企業者等の所得拡大促進税制については大企業と異なる条件を設けることとされています。具体的には、「30年4月1日から33年3月31日までの間に開始する各事業年度において平均給与等支給額が前年度比1.5%以上増加すれば給与等支給増加額の15%の税額控除」が認められ、「平均給与等支給額が前年度比2.5%以上増加し、教育訓練費増加等の要件も満たせば、給与等支給増加額の25%の税額控除を認める(上限はいずれも法人税額の20%)」とされています。
なお、中小企業者等については、大企業のような設備投資要件は設けられないとのことです。
③の要件にある「教育訓練費」とは、「国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で次のものをいい、上記の「比較教育訓練費の額」とは、前期及び前々期の教育訓練費の額の年平均額をいう」とされています。
イ その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものをいう。)を自ら行う場合の外部講師謝金、外部施設等使用料等の費用
ロ 他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
ハ 他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用
既に教育訓練に積極的に投資している会社にとって、さらに20%増という要件はいかがなものかという気はしますが、教育訓練に投資していない会社にとっては20%増といっても大した金額ではないということも考えられますので、いつまで続くかわかりませんが、一気に増やしすぎないということも重要だと思われます。
長くなりましたので(2)情報連携投資等促進税制の創設(アメ)以降は次回以降とします。