「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は全額が「資本の払い戻し」
税務通信3491号の裁判例・採決例に「東京地裁 剰余金の配当の取扱いを巡る事件で国敗訴①」という記事が掲載されていました。
この裁判は、連結親法人である原告が、外国子会社から受けた「剰余金の配当」の法人税法上の取扱い等を巡り争われたものとのことですが、この判決において「“「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は、その全体が「資本の払戻し」に該当する”と判断された」とされています。
原告であるX社(連結親法人)は、外国子会社Y社(米国デラウェア州法に基づき組成された外国法人)から、「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を受け、利益剰余金を原資とする配当(約432億円)については、受取配当として益金不算入とし、資本剰余金を原資とする配当については、資本の払い戻しとして約129億円を有価証券譲渡損失額として損金算入して連結所得金額から減算したとのことです。
X社は、「利益配当」と「資本配当」の効力発生日は同日であるものの、その決議はそれぞれ別で行われているため、上記のように別個に処理を行いましたが、国は効力発生日が同日であることから「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」の全体が資本の払い戻しにあたるとして、争いとなったとのことです。
裁判所はこの点については、上記の通り、利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は、その全体が「資本の払戻し」に該当すると判断したとのことです。実務担当者の感覚からすれば、資本剰余金と利益剰余金が帳簿上区分されており、決議も別個に行われていれば、たとえ効力発生日が同日であろうと、この事例の会社のように、それぞれを区分して考えてしまうような気がしますので、全体が資本の払い戻しとなるという点には注意が必要だと考えられます。
この流れからすると、原告が敗訴、国が勝訴となりそうなのですが、実際には、上記の取り扱いについては国の主張が認められているものの、国側が敗訴しているというのが興味深いところです。
理由は、みなし配当の金額等を算定する場合における「株式又は出資に対応する部分の金額」の算定方法の規定(現行: 法令23 ①四)を違憲・無効と判断したためとのことです。
そもそもの計算方法が違憲・無効とは話がかなり大きくなっていますが、残念ながらこの点の詳細については「詳細は次号以降」となっており、何が違憲・無効と判断されたのかについては、今後の記事での解説を待ちたいと思います。
なお、国は東京高裁に控訴しているとのことなので、最終的な決着まではまだ時間がかかりそうですが、計算方法自体の妥当性が問題とされているのであれば、実務にもそれなりに影響がありそうですので、当該裁判の行方には注意しておいた方がよいと思われます。