労働保険料の概算保険料の損金算入時期
労働保険料の会計処理については、方法がいくつか考えられると思いますが、以下のような処理を比較的多く見かけます。
①概算保険料の支払時
借)前払費用(仮払金など) XXX 貸)現金預金 XXX
②給与未払計上時(会社負担分計上)
借)法定福利費 XXX 貸)未払費用 XXX
③従業員負担分徴収時(給与支払時)
借)未払金(給与) XXX 貸)預り金 XXX
期末に関連するBS科目を整理してNET処理するかという点も問題となりますが、今回は概算保険料の法人税法上の損金算入時期について確認してみました。
労働保険料の損金算入時期については、法人基本通達9-3-3「労働保険料の損金算入の時期等」に以下のように記載されています。
9-3-3 法人が、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第15条《概算保険料の納付》の規定によって納付する概算保険料の額又は同法第19条《確定保険料》の規定によって納付し、又は充当若しくは還付を受ける確定保険料に係る過不足額の損金算入の時期等については、次による。(昭55年直法2-15「十三」により追加)
(1) 概算保険料 概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額は当該概算保険料に係る同法第15条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第3項に規定する決定に係る金額については、その決定のあった日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。
(以下省略)
上記(1)からすると、会社負担分が損金算入されていればとりあえずOKなのだろうと考えられますが、よくよく考えると「概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額」ってなんだろうという疑問が生じます。
概算保険料は基本的に前年の確定保険料をベースに全体として算定されるものなので、本来個々の労働者に紐付いて計算される性質のものではありません。そのため、年度中に入社したり退職したりしても、基本的に概算保険料は変動せず、そのような変動や昇級等による総賃金の増加による影響は年度更新時に確定保険料として差額を精算することととなっています。
このような制度からすると「概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分」というのは、単純に概算保険料算定の前提となった雇用保険料率のうち被保険者負担分の割合相当分という意味なのかなと考えられます。しかしながら、一方で、雇用保険の従業員負担分は給料等の支払いの都度、被保険者から徴収されていますので、そういった意味では、実際に徴収された金額が実際に「被保険者が負担すべき部分の金額」なので、概算保険料から従業員から徴収した金額を控除した金額を損金算入するということも考えられます。
賃金総額が増加傾向にあれば、「概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分」を単純に概算保険料算定の前提となった雇用保険料率のうち被保険者負担分の割合相当分と考えた方が損金算入額が大きくなりますが、賃金総額が減少傾向にあれば実際の徴収額を被保険者負担分と考えた方が損金算入額が大きくなります。
労働保険は、社会保険と比べて料率が小さい上、労災保険料は全額事業主負担であることから、被保険者負担分の処理が与える影響は一般的に大きくないものと考えられます。そういった観点からすると、どちらの考え方にせよ、継続的に同じように処理していれば大きな問題となることはないのかもしれませんが、労働保険の対象となる毎月の賃金総額に対して会社負担分のあるべき金額を損金算入していくというのが理屈的には一番無難な気はしています。