フェア・ディスクロージャー・ルールのポイントを確認(その2)
フェア・ディスクロージャー・ルールのポイントを確認(その1)の積み残しを確認します。
まず、上場会社等がその業務に関して情報を取引関係者に伝達した場合に、当該取引関係者から当該情報が重要情報に該当するのではないかという指摘を受けた場合どのように対応するのかですが、これはガイドライン問3で以下のように述べられています。
両者の対話を通じて、以下のような対応が考えられるとされています。
①当該情報が重要情報に該当するとの指摘に上場会社等が同意する場合は、当該情報を速やかに公表する
②両者の対話の結果、当該情報が重要情報に該当しないとの結論に至った場合は、当該情報の公表を行わない
③重要情報には該当するものの、公表が適切でないと考える場合は、当該情報が公表できるようになるまでの間に限って、当該取引関係者に守秘義務及び当該上場会社等の有価証券に係る売買等を行わない義務を負ってもらい、公表を行わない
IR担当者が口を滑らせたとか、経営者が気分良くしゃべりすぎてしまったというようなことはあり得る話ですが、三番目のNDAを結んだうえ売買を行わない義務を負ってもらうというのはあまり現実的ではないように思いますので、公表することになるものと考えられます。
これに関連して、寄せられたコメントの中に、「伝達された情報が公表情報と思い込んでいる場合など、上場会社等や取引関係者が情報伝達時点では重要情報に該当することに気付かず、事後的に上場会社等から「伝達した情報は重要情報に該当するが公表しない」と説明を受けた場合で、その前に取引してしまっている場合や他の取引関係者に伝達してしまっている場合は、何か特別な対応は必要になるのか。 」というものがありました。
これに対する金融庁の考え方は「金融商品取引業者等においては、金商法令上、適切に法人関係情報を管理することが求められています。また、伝達された情報が重要事実に該当する場合、当該重要事実の公表前に取引を行った者は、インサイダー取引規制の対象となることも考えられます。 」とされています。機関投資家など情報を受けた側からすれば、後からそんなこと言われても困るでしょうが、このような事態に巻き込まれないためにも、重要情報に該当する可能性があることについては会社に対して積極的に指摘することになるのかもしれません。
そうするとやはり何がFDルールの対象となるのかが重要ですが、「企業の将来情報に関する議論等の取扱い」に関連して前回取り上げた項目以外で、コメント対応の中に、「商品の販売実績の販売件数と平均単価のどちらか一方のみの情報の伝達をする場合において、その伝達の相手方が過去の実績を知っている場合であっても、伝達される情報のみでは当期の売上高や利益の額ないし前期と比較した増減を推定するには足りない場合は、FD ルールの対象とならないとの理解でよいか。」というものがありました。
これに対する金融庁の考え方は、「ご指摘のような販売件数と平均単価のどちらか一方のみの情報を伝達する場合で、その情報のみが公表されても、有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性があるとはいえない情報については、FD ルールの対象にならないものと考えられます。ただし、当該情報と過去に提供されたその他の情報とを一体として見た場合、上場会社等の業績を容易に推知し得るような場合には、FD ルールの対象となる可能性があります。」とされています。
当然と言えば当然ですし、FDルール以前から同様ではありますが、IR担当者や開示書類の作成者など関連する担当者がきちんと連携を図ることが重要となります。