社外役員の報酬はどれくらい(2017年)
少し前の労政時報3944号に「2017年役員報酬・賞与等の最新実態」が掲載されていましたので、社外役員の報酬水準について確認します。
この調査は、上場企業3562社と上場企業に匹敵する非上場企業273社を対象に実施されたもので、有効回答数は120社とのことです。
1.社外取締役
社外取締役について回答があったのは235人(平均年齢63.1歳)で、平均支給額は、報酬月額52万円、年間賞与19万円で、年間報酬は643万円とのことです。
コーポレート・ガバナンスコードの導入などによって、社外取締役の選任が強く求められるようになっている一方で、社外取締役の適任者があまりいないという話も耳にするので、社外取締役の報酬も上昇傾向にあるのかと思いましたが、労政時報が実施している過去の調査結果を確認してみると、2014年以降の単純平均額は以下のようになっていました。
2014年 690万円(回答数129人)
2015年 674万円(回答数166人)
2016年 669万円(回答数228人)
2017年 643万円(回答数235人)
単純平均ベースではありますが、上記の結果からは、社外取締役は増加しているものの、平均報酬は低下傾向にあるということがうかがえます。
年間報酬の分布では、最頻値が600万円台(15.3%)であるものの、これに300万円台(14.9%)が続いているとのことです。このほか10%を超えているのは400万円台で11.5%となっています。なお、最高は1944万円、最低は12万円、中位数は590万円とのことです。
社外取締役に賞与が支給されているのは全体の7.2%にすぎないとのことですので、月50万円か30万円(ないし25万円)というケースが多いものと推測されます。
コーポレート・ガバナンスコードの導入によって、仕方なく選任数を増やしている会社も相当数存在すると考えられますが、そのような会社での報酬はあまり高くないと思われますので、単純平均の報酬額が下がってきているということではないかと考えられます。
また、この調査において、監査等委員会設置会社の企業で、監査等委員を務めている取締役の報酬も調べており、結果は平均で1296万円とされています。ただし、「監査等委員の取締役については、集計対象数が少なく、報酬水準についてもバラつきが大きい」と注がつけられており、この結果を鵜呑みにしてはならないと思われます。
「別冊商事法務№421 東証一部上場会社の役員報酬設計――報酬水準・報酬制度の分析――」によれば、監査等委員会設置会社の社外役員を含む東証一部上場企業全体の社外監督者一人あたりの報酬額平均値は600万円とされていることからしても、上記の回答結果は異常値と考えて良さそうです(ちなみにこの調査によれば、500万円以下が52%、800万円以下をあわせると79%に達するとされています)。
2.社外監査役
社外監査役について回答があったのは174人(平均年齢62.4歳)で、平均額は、報酬月額45万円、年間賞与10万円で、年間報酬の平均は550万円とのことです。なお、賞与が支給されているのは、取締役よりも減少し全体の5.7%となっています。
社外監査役の報酬についても過去の労政時報の調査の推移を確認してみると以下のようになっていました。
2014年 533万円(回答数246人)
2015年 513万円(回答数222人))
2016年 545万円(回答数184人)
2017年 550万円(回答数174人)
傾向として報酬の水準は増加傾向とも減少傾向とも判断しかねますが、監査等委員会設置会社へ移行している会社も増加しているため、回答数が減少しているという点に特徴があります。
なお、上記の平均値は、常勤である社外取締役の報酬も含まれているため、年間報酬は最高が2498万円、最低が24万円と社外取締役よりもバラツキが大きくなっているとのことです。
最頻値は300万円台で16.1%、これに200万円台の14.4%、100万円台13.2%とつづいています。ちなみに600万円台は10%には届かないものの9.8%と100万円台に続き多いレンジとなっています。
平均は上記の通り550万円で、中位数が420万円となっています。平均値でみると、思ったほど社外取締役と社外監査役で報酬に差がないなという感じがしますが、上記社外監査役には常勤監査役も含まれるということを踏まえると、月額15万円~20万円程度の差があるというのが実態ではないかと推測されます。