閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

平成30年3月期の有価証券報告書作成に係る主な改正点(その1)

少し前に”18年有価証券報告書から適用される開示内容の改正点”で18年3月期の有価証券報告書の改正点について簡単に確認しましたが、今回はASBJの有価証券報告書作成セミナーの内容に基づき、もう少し詳細に改正点等を確認します。

2018年3月期の有価証券報告書から適用される改正点の多くは、ディスクロージャーワーキンググループの提言を踏まえた一体開示の環境整備によるものが多くなっているという特徴がありますが、会計まわりに影響する部分をまず確認することとします。

経理の状況以下に関係する主な改正点としてASBJのセミナーで取り上げられていた項目は以下の五つとなっています。

  1. 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する事項
  2. 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理に関する事項
  3. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する事項
  4. 税効果会計に係る会計処理に関する事項
  5. 資金決済法における仮想通貨に係る会計処理に関する事項

上記のうち、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理に関する事項と資金決済法における仮想通貨に係る会計処理に関する事項は影響ある会社は少ないと思いますので割愛し、のこりの三点について確認します。

1.連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する事項

実際にはこの改正も多くにの会社で無関係と思われますが、在外子会社がある会社においては「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理」と言われると関係あるのではないかと考えてもおかしくないので、内容をあらためて確認しておきます。

これは1年前の2017年3月29日に公表された実務対応報告第18号「連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」、第24号「持分法適用会社の関係処理に関する当面の取扱い」の改正に伴うものです。

この改正は、国内子会社または国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準を適用した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合には、一定の修正事項を除きその連結財務諸表を利用して連結財務諸表を作成することができるようにしたものです。

IFRSの任意適用会社が徐々に増加してきているとはいえ、この改正が影響する会社は少数と思われますが、当該実務対応報告の適用初年度かの前から国内子会社等が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、当該適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」又は「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いを適用するときは、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされていますので、会計方針の変更の注記が必要となります。

適用開始は、早期適用も認められていたものの、原則適用は平成29年4月1日以後開始事業年度の期首からとなっていますので、会計方針を変更した会社では既に1Qの四半期報告書から注記がなされているはずですので、期末も同様の注記を行うということになります。

例えば、住友電気工業株式会社では2018年3月期の第1四半期報告書において、以下の注記を行っています(2Q、3Qも同様)。

(会計方針の変更)
(連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い等の適用)
 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号 平成29年3月29日)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号 平成29年3月29日)を当第1四半期連結会計期間から適用し、当社の四半期連結決算手続において、「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱い等に従って、国内子会社である住友理工㈱及び国内関連会社である住友ゴム工業㈱が指定国際会計基準に準拠して作成した連結財務諸表及び要約四半期連結財務諸表を利用し、必要な修正を加えております。
 この結果、前連結会計年度における連結貸借対照表は、投資有価証券が3,708百万円、固定負債その他で1,595百万円、その他有価証券評価差額金が1,941百万円、退職給付に係る調整累計額が728百万円、非支配株主持分が1,785百万円それぞれ増加した一方で、繰延ヘッジ損益が171百万円、為替換算調整勘定が15,566百万円それぞれ減少しております。
 また、前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、利益剰余金の遡及適用後の前期首残高は13,396百万円増加しております。

2.従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する事項

これは、2018年1月12日公表された実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」に伴うものとなっています。

有償新株予約権は300社以上の上場会社で導入されているとのことですので、影響をうける会社はそれなりにあると思われます。

上記実務対応報告においては、「権利条件付き有償新株予約権」を「ストック・オプション等に関する会計基準」で定める「ストック・オプション」として会計処理するというのが原則ですので、遡及修正するというのが原則的な位置づけとなりますが、経過措置により、実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利条件付き有償新株予約権を付与した取引については、従来採用していた会計処理を継続することができるとされています。

「権利条件付き有償新株予約権」を発行している会社では、上記経過措置を利用するのが通常と考えられますので、以下では経過措置に従い処理する場合の注記等のみ確認することとします。

①会計方針の変更等の注記
実務対応報告において、経過措置を採用して従来の会計処理を継続する場合においても、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされているため、会計方針等の注記が必要となります。

この点、ASBJの「有価証券報告書の作成要領(平成30年3月期提出用)」では、以下の注記例が掲載されています。

 「従業員等に対して権利管理条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号 平成30年1月12日。以下「実務対応法報告第36号」という。)等が公表日以後適用することができるようになったことに伴い、公表日以後実務対応報告第36号を適用し、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引については、「ストック・オプション会計基準」(企業会計基準第8号 平成17年12月27日)等に準拠した会計処理を行うこととした。
 ただし、実務対応報告第36号の適用については、実務対応報告第36号第10項(3)に定める経過的な取扱いに従っており、実務対応報告第36号の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、従来採用していた会計処理を継続している。

 
 上記の注記例では、実務対応報告の「公表日以後」会計処理を変更している前提で注記が作成されていますが、「平成30年4月1日以後」実務対応報告を適用している旨の注記の方がが一般的な注記になるのではないかと思われます。プロネクサスや宝印刷の記載例では「平成30年4月1日以後」の記載例が示されると思われますので、そちらを参照したほうがよいと思われます。

②従来の会計処理を継続するものの、実務対応報告を早期適用する場合

従来の会計処理を継続する場合は、一定事項の注記が必要とされていますので、実務対応報告を早期適用することとした場合には、ストック・オプション等関係の注記に「権利確定条件付き有償新株予約権の概要」、「採用している会計処理の概要」の注記が必要となります。

なお、ASBJの作成要領では、「権利確定条件付き有償新株予約権の概要」の上に、「追加情報」として、実務対応報告の適用日前に付与した権利条件付き有償新株予約権については、従来採用していた会計処理を継続している旨を記載する例が示されています。

3.税効果会計に係る会計処理に関する事項

これは2018年2月16日に公表された企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の公表に伴うものです。

上記改正の適用時期は原則として平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとされていますが、表示の取扱いおよび注記事項の取扱いについては、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされています。

早期適用可能なものを簡単に確認しておくと、表示については、流動固定分類を廃止し、同一の納税主体の繰延税金資産・負債相殺後、繰延税金資産は投資その他の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債に表示するというものです。

一方、注記事項については、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳において、税務上の繰越欠損金が計上されている場合で、税務上の繰越欠損金が重要である場合は、繰延税金資産から控除された評価性引当額について、税務上の繰越欠損金にかかる評価性引当額と将来減算一時斉藤の合計に係る評価性引当額に区分して記載することが必要とされています。また、税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰越期限別に繰越欠損金に係る繰延税金資産の額、評価性引当額等の記載が求められる他、当該繰越欠損金に対する繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を開示することとされています。

繰越欠損金が存在する会社の場合、単純に早期適用するという選択は難しいですが、繰越欠損金がなければ、表示の簡便性から早期適用を選択するケースは十分に考えられます。

早期適用した場合に影響があるのは以下の部分となります。

①経理の状況の冒頭部分の記載
上記の改正よって、本来であれば比較情報として前期の情報も必要となりますが、過年度の情報については新たに情報を収集しなければならなくなるというような実務に配慮し、一定の注記事項に係る比較情報については、経過的な取扱いによって記載しないことができるとされています。

このため、経理の状況の冒頭部分の「連結財務諸表及び財務諸表の作成方法」に、比較情報については、改正前の連結財規、財規に従って作成している旨の記載が必要となります。

②連結BS、BSの表示
改正を早期適用した場合、繰延税金資産は固定資産(投資その他資産)、繰延税金負債は固定負債に表示されることとなりますので、前年度の財務諸表の組替えが必要となります。一定の注記事項については比較情報を記載しないことができるということと混同しないように注意が必要です。

③表示方法の変更
②に関連して、表示方法の変更の記載が必要となります。今回の改正では、注記事項の改正も行われているため、ASBJの注記例では「・・・繰延税金資産は投資その他の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する方法に変更するとともに、税効果会計注記を変更した」というように例示されています。

注記事項の変更については、以下のような記載例が示されています。

また、税効果会計注記において、税効果会計基一部改正第3項から第5項に定める「税効果会計に係る会計基準」注解(注8)(評価性引当額の合計額を除く。)及び同注解(注9)に記載された内容を追加している。ただし、当該内容のうち前連結会計年度に係る内容については、税効果会計基準一部改正第7項に定めている経過的な取扱いに従って記載していない。

④税効果会計関係の注記
評価性引当に関する事項の注記が増加しており、細かな形式等は、プロネクサスや宝印刷等の記載例を参照していただければと思いますが、内訳に税務上の繰越欠損金が計上されている場合、改正後は繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減産一時斉藤の合計に係る評価性引当額を区分して記載する必要がありますが、比較情報は「-」として、従来の開示金額を「評価性引当額小計」に記載することができます。

長くなりましたが、以上が経理の状況以下に関連する部分の主な改正内容となっています。

関連記事

  1. 単体開示簡素化第1号は(株)スクロール

  2. 開示すべき重要な不備が倍増ー平成27年3月期

  3. 上場企業の約4%が不正関連で適時開示を行っている?

  4. マイナス金利をふまえた会計基準の改正予定は?

  5. 子会社設立を代表取締役に一任することはできるのか?

  6. 2018年度不適切な適時開示件数は例年並み




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,935,986 アクセス
ページ上部へ戻る