「会社法制(企業統治関係)の見直しに関する中間試案」を確認(その2)
「会社法制(企業統治関係)の見直しに関する中間試案」を確認(その1)の続きです。
4.取締役等に関する規律の見直し
取締役等に関する規律の見直しですが、主に報酬関連の取扱いで見直しが取り上げられています。
(1)取締役の報酬等
①取締役の報酬等の内容に係る決定方針
取締役の報酬等の内容に係る決定に関する方針とは、各取締役の報酬等についての報酬等の種類ごとの比率に係る決定の方針、業績報酬等の有無及その内容に係る決定の方針、各取締役の報酬等の内容に係る決定の方法の方針などを意味し、この方針を定めているときは、株主総会において、当該方針の内容の概要及び当該議案が当該方針に沿うものであると判断した理由を説明しなければならないとされています。
方針を定めていなければ説明は上記はあてはまらない訳ですが、上場会社の場合は投資家に対して方針はないとはいいにくいので、このまま改正がすすめば、対応が必要となるケースもでてくると考えられます。
②金銭でない報酬等に係る株主総会の決議による定め
パフォーマンスシェアやリストリクテッドストックなどの株式報酬等に関する株主総会の決議事項が見直されます。すなわち、取締役の報酬等のうち金銭でないものについて、以下の事項については、定款に定めていない場合には株主総会の決議によって定めるとされています。
③取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任
現行実務上、個人別の報酬を明らかにしないために、取締役個人別の報酬等の決定を委任された取締役会が、その決定を取締役に再一任することが行われています。中間試案で、このような再委任は代表取締役の監督に不適切な影響を与える可能性があるため禁止すべきとの指摘をうけ、再一任するためには株主総会の決議を要するものとする案が示されています。一方で、事業報告での記載内容を充実することで、現行の規定を見直さないという案も対案として示されています。
本来、客観的で透明性の高い報酬体系が設定されていれば、代表取締役への再一任など不要なはずですが、なかなかそうはいかないというのが実態ではないでしょうか。
④株式報酬等
中間試案のタイトルは「株式報酬等」となっていますが、これは株式報酬を無償発行するようにするかというもので、これが認められることとなると、株式報酬付与時の建付がシンプルになります。
現行実務においては、募集株式を無償で発行することができないと解されているため、株式報酬を取締役に付与する場合には、一旦金銭または金銭債権を報酬として付与し、当該取締役を引受人として取締役が報酬として付与された金銭を払い込み又は金銭を現物出資して給付する形をとることが必要とされています。
中間試案では、上記のような現物出資の方法によらずに、金銭の払い込みを要しないで株式を報酬等として交付することを認めるという案が示されています。
加えて、新株予約権をストックオプションとして交付する場合には、新株予約権の行使に際して財産の出資を要しないものとすることを認めるというものも上記の案には含まれています。
一方で、株式と新株予約権では議決権の有無が異なることなどから、ストックオプションとして交付する場合の取扱いのみを変更する案、および現行の規定を見直さない案も示されており、今後の議論がまたれます。
⑤事業報告の記載内容の充実
役員報酬等について、事業報告に以下の事項の開示が追加されるとのことです。
- 報酬等の内容に係る決定に関する方針に関する事項
- 報酬等についての株主総会の決議に関する事項
- 取締役会による各取締役の報酬等の内容に係る決定の一部または全部の再一任に関する事項
- 業績連動報酬に関する事項
- 職務執行の対価として株式会社が交付した株式又は新株予約権等(会社法施行規則第2条第3項第14号に規定する新株予約権等をいう。)に関する事項
- 報酬等の種類ごとの総額
なお、報酬等の額を個人別に事業報告に開示すべきという議論もあるようですが、この点については、なお検討するとされています。
取締役等に関する規律の見直しの途中ですが、今回はここまでにします。