そういえば、四半期開示の存続はどうなった?
以前「四半期開示はなくなるか?」で取り上げましたが、日本経済再生本部が作成した「未来投資戦略2017」では、四半期開示について以下のように記載されています。
決算短信については、本年2月に、自由度を高め、「速報」としての役割に特化するとともに、業績予想開示の多様化を後押しするための見直しが行われた。当該見直しの効果の分析結果や、国際的な状況や議論も踏まえ、四半期開示については、義務的開示の是非を検証しつつ、企業・投資家を含む幅広い関係者の意見を聞きながら、更なる重複開示の解消や効率化のための課題や方策等について検討を行い、来年春を目途に一定の結論を得る。
で、結論はどうなっているのだろうかと確認してみましたが、四半期開示についての議論が進捗している旨の記述は見当たりませんでした。
一方で、経団連が2018年3月30日公表した「2017年度経団連規制改革要望」内で四半期開示について以下のように記載されていました。
(提案の具体的内容)
四半期開示について、四半期決算短信、四半期報告書それぞれが異なる制度を根拠としながら、開示が要請される項目の重複などがあるため、真に開示が必要な情報を再度整理すべき。また、将来的には欧州を初めとした諸外国(英、仏等)と同様に第1及び第3四半期開示義務を廃止すべき。
「未来投資戦略2017」では「企業・投資家を含む幅広い関係者の意見を聞きながら」とされていることに対して、企業側の意見は「第1及び第3四半期開示義務を廃止すべき」と見解を示した形となっています。
提案理由としては以下のように記載されています。
日本の上場企業においては、毎四半期ごとに、四半期決算短信(証券取引所規則)、四半期報告書(金融商品取引法)と、それぞれが異なる制度を根拠とした開示書類を提出しており、その内容について経営成績に関する記載や財務諸表等、相当程度の項目が重複している。また、大量の開示書類を四半期単位で作成しているため、これら書類作成に携わる社員の稼動・負担は膨大なものになっている。
一方で主要国に目を転じれば、米国は証券取引法に基づく四半期報告書(10-Q)のみを開示しており、英、仏等においては、第1及び第3四半期開示制度自体が存在しない状況である。
現在、日本においては、官民を挙げて「働き方改革」「生産性向上」に取り組んでいるところであり、また、未来投資戦略2017において、「四半期開示について、義務的開示の是非を検証しつつ、更なる重複開示の解消や効率化のための課題や方策等を検討」することとしている。これらを踏まえ、真に開示が必要な項目の精査等を通じた開示項目の簡素化を要望したい。また、将来的には、欧州をはじめとした諸外国と同様に、四半期開示義務自体を廃止すべきと考える。
要望が実現すれば開示書類作成に携わる社員の負担軽減による「働き方改革」につながるとともに、「企業の生産性向上」の実現を通じた持続的な企業価値の向上が図られると考える。
ここで「働き方改革」が理由として使われると、実務担当者としては、やっていることが会社からは全く評価されていないことを追認されているようで、なんとも複雑ではありますが、どうせならもう一歩進んで2Qも廃止でがんばってもらえたらと思います。
監査人も忙しい、忙しいと言っているので、四半期は監査対象外の短信のみの開示として、後は、各社がどのように投資家と対話していくかを決定すればよいのではないかと個人的には考えています。とはいえ、とりあえず1Qと3Qがなくなるだけでも、決算又決算が、決算ちょっと休んで又決算くらいにはなるので、早急に実現されることを期待します。
がんばれ経団連。