収益認識基準-法人税と消費税で取扱いに差
税務通信3512号の税務の動向に「収益認識基準導入後も消費税の取扱いは変更なし」という記事が掲載されてていました。
平成30年度税制改正によって、法人税法上は収益認識基準への対応が図られていますが、一方で消費税については特に変更が行われていいないため、収益認識基準により収益認識のタイミングが変わっても消費税の計上時期には影響がないとのことです。
税務通信の記事では例として6月1日に公表された法人税基本通達2-1-40の2「返金不要の支払の帰属の時期」(新設)が取り上げられていました。
上記通達では以下ように述べられています。
法人が、資産の販売等に係る取引を開始するに際して、相手方から中途解約のいかんにかかわらず取引の開始当初から返金が不要な支払を受ける場合には、原則としてその取引の開始の日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、当該返金が不要な支払が、契約の特定期間における役務の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと認められる場合において、その支払を当該役務の提供の対価として、継続して当該特定期間の経過に応じてその収益の額を益金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 本文の「返金が不要な支払」には、例えば、次のようなものが該当する。
(1) 工業所有権等の実施権の設定の対価として支払を受ける一時金
(2) ノウハウの設定契約に際して支払を受ける一時金又は頭金
(3) 技術役務の提供に係る契約に関連してその着手費用に充当する目的で相手方から収受する仕度金、着手金等のうち、後日精算して剰余金があれば返還することとなっているもの以外のもの
(4) スポーツクラブの会員契約に際して支払を受ける入会金
法人税法上は、その取引の開始の日に属する事業年度に益金算入することを原則としつつも、収益認識基準適用を踏まえ、特定期間の経過に応じて益金算入することを認めています。
一方で、消費税法においては、収益認識基準に対応した改正は特段行われていないため、取扱いは従来どおりとなり、法人税と消費税で認識時点に差が生じる可能性があるとされています。
また、消費税基本通達9-6-2「資産の譲渡等の時期の別段の定め」では以下の通り述べられていますが、「消費税の本質からすると、収益認識会計基準がすべからく同通達によって認容されるとは言い難いようだ。」とされています。ただし、一方で「改正による実務への影響度合いをみながら、国税庁は適宜情報を公表していく方針だ。」とされていますので、消費税法上も何らかの手当がなされる可能性は若干残されているようです。
消費税基本通達9-6-2
資産の譲渡等の時期について、所得税又は法人税の課税所得金額の計算における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期に関し、別に定めがある場合には、それによることができるものとする。
上記の他、自社ポイントの付与を履行義務と識別した場合には、収益を繰延べ前受金として計上することや、割り戻し等を変動対価として収益を減額して認識するような処理も消費税法では想定されておらず、このような収益認識においても法人税と消費税で取扱いに差が生じることとなるようです。
始まれば慣れの問題かもしれませんが、消費税の確認はやりずらくなりそうです。