18年4月以降に発行された報酬ではない有償ストック・オプションとは?
2018年1月12日に公表された実務対応報告36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」によって、2018年4月1日以降に発行されたいわゆる「有償ストック・オプション」は、ストック・オプション会計基準第 2 項(2)に定めるストック・オプションに該当するとされましたが、18年4月以降も報酬に該当しない有償・ストックオプションの発行事例がでてきています。
その一つが2018年4月6日に「募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ」を公表した株式会社ソフトフロントホールディングス(JSQ)です。
上記資料では、従来、有償ストック・オプションの発行時に記載されていたのと同様の以下の文言が記載されています。
なお、本新株予約権は新株予約権を引き受ける者に対して公正価格にて有償で発行するものであり、特に有利な条件ではないことから、株主総会の承認を得ることなく実施いたします。また、本新株予約権は付与対象者に対する報酬としてではなく、各者の個別の投資判断に基づき引受けが行われるものであります。
そんなことが認められるの?
と上記資料を見ていくと、どうやら「権利条件付き」ではないからというのが答えのようです。
実務対応報告第36号は「概ね次の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象とする。」として、その内の一つに以下があります。
募集新株予約権には、権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されているか、又は勤務条件は付されていないが業績条件は付されている。
上記開示資料によれば、権利行使条件として業績条件は設定されていません。行使期間は発行日の約6ヶ月先から10年間となっていますが、退職によって権利行使が不能になるというような条件もなく、新株予約権の発行対価を払い込みさえすれば、権利が確定するという仕組みとなっていることがうかがえます。
広く一般の従業員に対して権利が割り当てられているわけではないので、退職したらどうするという点は気にならないということなのだと推測されます。
しかも、この事案では以下の上限が付されています。
割当日から本新株予約権の行使期間の終期に至るまでの間に金融商品取引所における当社普通株式の普通取引終値が一度でも行使価額に 30%を乗じた価格を下回った場合、新株予約権者は残存するすべての本新株予約権を行使期間の満期日までに行使しなければならないものとする。
上記のような条件が付されているため、「放棄」についての条件も特に記載されていません。権利行使価格は直近の株価から決まっているので、株価が現状の水準の1/3以下くらいにならければ条件にはヒットしない訳ですが、条件にヒットしたものの行使がなされない場合にどうなるのかという問題もありそうです。
権利取得後、株価が中途半端に下落した状態で退職する場合もなかなか悩ましい状況が想定されますので、自分が割当対象だとしたら、応募しないという選択をするかもしれません。