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2021年3月期よりKAM導入で監査基準改訂

2018年7月5日に企業会計審議会は「監査基準改訂に関する意見書」を公表しました。「意見書」というと単なるレポートのような感じがしますが、中には「監査基準の改訂について」と改訂の経緯等が記載されており、監査基準を改訂するものとなっています。

公開草案は2018年5月8日に公表されていましたが、意見募集によるコメントによって監査基準本文について変更はなく、前文の「監査基準の改訂について」の文言が少し変更されているにとどまっています。

今回の一番大きな改訂は、監査人が監査の過程で監査役等と協議した事項の中から「監査の主要な検討事項」(いわゆるKAM:Key Audit Matters)として決定した事項について、関連する財務諸表における開示がある場合には、当該開示への参照を付した上で、監査上の主要な検討事項の内容、監査人が監査上の主要な検討事項であると決定した李湯及び監査における監査人の対応を監査報告書に記載しなければならないとされている点です。

監査人が財務諸表には関連する記載がない事項を「監査の主要な検討事項」とすることも考えられ、その場合、守秘義務との関係が問題となりますが、今点については「監査基準の改訂について」の「二 主な改訂点とその考え方 1「監査上の検討事項」について (5)「監査上の主要な検討事項」と企業による開示との関係」において、一義的には経営者に追加開示を求めることが期待されるとされていますが、開示が行われない場合に当該情報を「監査上の主要な検討事項」に含めることは守秘義務が解除される正当な理由に該当するとされています。

なお、「監査上の主要な検討事項」の記載は、当面金商法監査の監査報告書(非上場企業のうち資本金5億円見何又は売上高10億円未満かつ負債総額200億円未満の企業を除く)で求められることとされました(会社法監査の監査報告書は対象外)。

「監査の主要な検討事項」の記載は2021年3月期から適用開始となっていますが、早期適用も可能となっています。他の改訂については、2020年3月期からとなっており、東証1部上場企業については可能な限り2020年3月決算に係る監査からの早期適用を促すとのことです(T&A master No.747)。

”「監査上の主要な検討事項」の記載は、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにその意義がある”(「監査基準の改訂について 一 経緯」)とされていますので、ブランディングを意識する大手監査法人はさらなる早期適用を目指すのかもしれません。

とはいえ、今後日本公認会計士協会で実務指針が作成されることが想定されますので、それ以降ということになると考えられます。

そして気になるのは「監査上の主要な検討事項」としてどれくらいのものが記載されるのかですが、この点についてT&A master No.745「監査上の主要な検討事項(KAM)~欧州企業による開示事例の調査①~」で欧州企業の監査報告書に記載されたKAMの分析結果が掲載されていました。

この記事によると、ロンドン証券取引所に上場し、FTSE100の構成銘柄に選ばれている企業を中心に英国企業(2013年12月期からKAMが記載されている)100社を調査した結果、KAMの記載個数は4個が26社で最も多く、次いで3個が21社、2個および5個がそれぞれ13社と3~4個が中心で、2~5個で約7割を占めています。ちなみに1個は3社、最も多いのが9個で2社となっています。

記載された内容は、収益認識45個、のれん42個、のれん以外の無形資産41個、税金リスク・不確実な税務ポジション40個、引当金38個、退職給付・年金27個と続いています。「税金リスク・不確実な税務ポジション」は日本基準ではあまり馴染みがない事項でありますが、その他の項目については日本基準でも記載されるケースが多くなるのではないかと思われます。収益認識が一番多いものの、ほとんどの企業で記載されるではないかと思っていたので、思ったよりも少ないというのが率直な感想です。

また、STOXX600株価指数の構成銘柄として採用されている企業のうち、英国以外の企業(12月決算の場合2017年12月期からKAMが記載されている)から100社を選定した調査結果でも、KAMの記載個数は3個または4個がそれぞれ30社と最も多くなっており、5個15社、2個14社と、やはり2個~5個が中心となっています。

記載されている内容はのれんが52個で最も多く、税務リスク・不確実な税務ポジション35個、収益認識33個、のれん以外の無形資産32個と続いています。

上記の調査結果は株価指数の構成銘柄に選出されるような企業なので、論点が多く、全体的な平均値よりも記載個数が多いということも考えられますが、2個くらいは記載されいるのが普通なのではないかと思われます。

監査計画上「特別な検討を必要とするリスク」として記載した事項を「監査上の主要な検討事項」として記載するということになるのかなという気がしますが、順序が逆転しないことを祈ります。

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