交通機関による遅延証明書があっても遅刻分は無給?
天候の状態や人身事故などによって、電車が遅延するということはよく起こります。その際、改札で配っている遅延証明書をもらおうとする人の長蛇の列ができていたりすることもよくあります。
電車遅延による遅刻の場合は、遅延証明書を持ってくるようにといわれているからもらっているというケースも多いと思いますが、遅延証明書があれば、その分は遅刻しても給料がもらえるのが当然だと考えている方もいるようです。
しかしながら民法536条によれば、雇用契約の両当事者に責任のない事由により労働者が労務の提供ができなかった場合には、労働者は労務の提供義務を免れるとともに、反対給付である賃金の支払いを受ける権利も有しないこととされています。したがって、基本的な考え方としては、遅延証明書があっても遅刻分が有給となるわけではないということになります。
いわゆる「ノーワークノーペイの原則」で、上記の取扱いは当然といえば当然なのですが、実務上、遅延証明書を持ってこさせた上で、遅刻分を給料から控除しているかといえば、控除していないというケースの方が多いように思います。
そのような会社では、労働者が電車の遅延等で遅刻した場合は、当該交通機関が発行する遅延証明書の提出を条件に遅刻扱いとしないというような旨が就業規則に定められていることが多いと思います。交通機関の遅延による遅刻を、労働者に責任(落ち度)がある遅刻として給料から遅刻分を控除するというのは労働者に厳しすぎるという考え方によるものだと思われます。
電車が遅延して給料が減額されるとするのは確かに酷なのでそのような取扱いはあったほうがよいとは思いますが、一方で、電車が10分遅延したので遅刻しましたというのもどうかなという気はします。
必要以上に早く出社することを求めることになっても問題なので悩ましいところではありますが、遅延証明書も10分以下のものは認めないというような取扱いも検討の余地があるのではないかと思われます。