法人が収受した立退料の消費税の取扱いは?
再開発や老朽化したビルの建て替えなどにより賃借しているオフィスから立退きを求められることがあります。この際、立退きに応じる代わりに賃借人に対して立退料が支払われることがありますが、法人が収受した立退料の消費税の取扱いはどうなるのかが今回のテーマです。
直感的には損害賠償金的なもののように思えますので、消費税の取扱いとしては不課税取引になるのではないかという気はしますが、直感で処理を決定するわけにはいきませんので、きちんと確認することとしました。
法人が収受した立退料については、実務家のための消費税実例回答集で解説されていました。
まず、賃借人が賃貸人からの申出により賃貸借契約を解除されることに起因して受領する立退料は以下のような性格を有するとされています。
- 賃借権の消滅による補償金としての性格
- 立退きに伴う営業の一時休止等による収益補償等の性格
- 立退きに伴う移転費用等の補てんとしての性格
そして、通常は上記の性格のうち一つに基づいて支払われるというより、上記の性格が複合したものとして立退料が支払われるのが一般的とされています。
ある取引が消費税の課税対象となるか否かを判断する際の4要件の一つは資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供)であることですが、上記の性格に基づく立退料は、「資産(権利)の消滅に伴う補償、立退きに伴う営業の一時休止等による収益補償及び立退きに伴う移転費用等の補填であり、資産の譲渡等の対価に該当」しないため、消費税の課税対象とはならないとのことです。
上記のとおり、大家から立退きを求められた場合に、法人が収受した立退料については、基本的に消費税は不課税取引として処理するということになると考えられますが、同じ立退料でも不動産の賃貸人以外の者から受領する立退料については、権利(借家権)の譲渡との対価となるため、消費税の課税対象となるという点には注意が必要です。
例えば、他の法人がどうしてもその立地に店舗を出店したいというようなケースにおいて、立退料を収受して事務所等を他へ移転するということは有り得ます。このようなケースでは、不動産の賃貸人以外の者から立退料を受領することとなり、権利の譲渡として課税取引として取り扱われるということになります。
また、「立退料」を受領する側があえて課税取引となるような方向で交渉をすることは少ないと思いますが、仮に「立退料」の中に造作買取請求権に基づく部分が含まれていることが明確であれば、その部分については資産の譲渡等に該当し課税取引となると考えられます。
上記のように課税取引になる可能性はあるものの、実務担当者としては、法人が貸主から受領した立退料については、基本的に不課税取引と考えておけばよいのではないかと思います。