株主総会の基準日変更-今年は0社(全株懇調査)
1年ほど前に”株主総会開催を決算日後4ヵ月以内とする事例がでてきました”で取り上げましたが、株主との対話の充実を図るため、株主総会の開催日を決算日後3カ月を超えて開催できるように基準日を変更している事例があります。
上記で事例として取り上げたのは、業務用洗剤等の製造販売を手掛ける株式会社ニイタカ(東証一部、5月決算)と椿屋珈琲店等を展開する東和フードサービス株式会社(ジャスダック、4月決算)の2社で、この2社の2018年の株主総会開催時期は以下の通りとなっています。
1.株式会社ニイタカ(2018年5月期)
基準日:6月30日
株主総会招集通知発送日:9月7日
株主総会開催日:9月26日
連結計算書類の会計監査人監査報告書日付:7月23日
有価証券報告書提出日:8月29日
金商法の監査報告書日付:8月29日
2.東和フードサービス株式会社(2018年4月期)
基準日:6月30日
株主総会招集通知発送日:7月10日
株主総会開催日:7月31日
計算書類の会計監査人監査報告書日付:6月22日
有価証券報告書提出日:7月25日
金商法の監査報告書日付:7月27日
会社法124条2項において「基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。」とされているため、決算日後3カ月を超えて株主総会を開催できるようにするためには、定款を変更して基準日を変更する必要があります。
上記2社はいずれも従来よりも1カ月基準日を遅くするように前期の総会で定款変更を実施していますが、東和フードサービスについては、4月決算で7月末に株主総会を開催していますので、基準日が変更されているものの、結果的には単に総会前に有報を提出している会社の一つといえるかもしれません。
有価証券報告書提出時には添付書類として株主総会招集通知を添付する必要がありますが、ニイタカ社のように有価証券報告書提出時点で、総会招集通知ができていない場合には、訂正有価証券報告書を提出して添付書類を添付することになるようです。
東和フードサービスは有報提出前に総会招集通知が発送されているので、有価証券報告書に招集通知が当初から添付されていますが、総会で変更した定款については、訂正有価証券報告書を提出して添付しています。
さて、昨年の総会で基準日を遅らせる事例が出てきたことで、3月決算会社でもそれなりに同様の変更を行う会社がでてくるのではないかと思っていましたが、”全国株懇連合会(全株懇)が公表した「平成30年度全株懇調査報告書~株主総会等に関する実態調査集計表~」によれば,回答した上場1,682社のうち,基準日を変更した会社は1社もなかった。”(経営財務3385号)とのことです。
ただし、全株懇が実施したCGコード補充原則1‐2③に関するアンケートでは、調査対象となった上場会社1,682社のうち、変更予定との回答が7社(0.4%)あったとされています。検討中は54社(3.2%)とされ、残りは変更の予定はないとの回答とされています。
この感じからすると、決算日後3カ月超の株主総会開催が増加するというトレンドにはないといえそうです。仮に総会を1カ月遅らせると、進行期の1Qの数値がほぼ固まっているという状況の中で前期の総会が開催されることとなるので、株主も1Qがどうなのかをより気にするようになってしまうのかもしれません。