決算公告はいつまでに行わなければならない?-決算日後約5カ月後はOK?
決算公告が必要なのは大企業だけでしょ?とおっしゃる非上場中小企業の経営者の方は多いですが、会社法第440条では以下の通り規定されています。
(計算書類の公告)
第四百四十条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
(以下省略)
440条2項以下で有価証券報告書提出会社やインターネットのホームページで計算書類の開示を行っている会社などの例外があるものの、会社法上は株式会社は決算公告をしなければならないものとされています。
決算公告は通常官報に掲載されることが想定されていますが、2018年5月11日付けの産経新聞「【ビジネスの裏側】なぜ出さない決算公告 法で義務付けも実態は数%? 罰金も適用少なく」によると、きちんと決算公告がなされているのは全体の数%程度にすぎないとのことです。
決算公告を出さなかった場合、会社法976条2号によって100万円以下の過料という罰則が定めれられていますが、上記の記事では”法務省や経済産業省では罰が科された前例について統計をとっておらず、法務省民事局の担当者は「実際に罰せられた例は聞いたことがない」”と述べられています。
きちんと罰金取ればいいじゃないという気もするものの、かといって、適当な決算公告が行われることによる弊害も考えられますので、会計監査人の監査を義務付けるのと同様、大会社のみとするような改正があってもよいのではないかと思います。
ちなみに決算公告をきちんと行っているのは全体の数%程度とはいうものの、非上場でもTVCMをやっていたような会社はきちんと決算公告をやっているに違いないということで、たまたま最近検討したクラウド人事労務管理ソフトを提供してるSmartHR社の決算公告を検索してみると、以下の決算公告がヒットしました。
もう少しで大会社という資本金ですが、12月決算で決算公告日が5月22日というのは問題ないのだろうかという点が気になりました。それで今回はこのテーマで書いているのですが、前述の会社法440条では「定時株主総会の終結後遅滞なく」となっています。
法律の条文において「遅滞なく」はどの程度の期間を意味するのかですが、この点については、以前”条文の読み方(その3)-「遅滞なく」「直ちに」「速やかに」”で記載したとおり、「事情の許す限りすぐに」というニュアンスで用いられるものです。
一般的には遅滞気味といえるタイミングなので何か事情があったのかと同社のHPを確認してると、現時点では資本金が20億7,613万3,330円(資本準備金含む)となっていることがわかりました。資本金増加の要因を確認したところ、2018年1月に「戦略的スキームSPVを活用した15億円のシリーズB資金調達」のプレスリリースが行われており、これにより資本金等が増加したということのようです。
この資金調達に絡み12月末の決算数値の確定が遅れたということかもしれません。これで大会社として来年からはPLも開示されることになると思いきや、2018年10月23日電子公告に「資本金の額の減少公告」が掲載されており以下のように記載されています。
当社は、資本金の額を563,664,000円減少することにいたしました。この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から1箇月以内にお申し出下さい。
17年12月末の利益剰余金のマイナスを0にするための減資ですが、17年12月末の資本金及び資本準備金からの増加額が約11億円で資本金と資本準備金の増加が同額(半々)だと仮定すると、この減資によって年度末の資本金は5億円以上とはならないということになりそうです。
というわけで、上場しなければ、結局来年もBSのみが決算公告されるのではないかと思われます。