税理士に対する資料不提示で秘匿認定
T&A master No.771に「税理士に対する資料不提示で秘匿認定」という記事が掲載されていました。
これは税理士に対して賃料収入に関する資料を提示しなかった納税者に対する重加算税を適法と判断した(東京地裁 平成30年6月29日確定)という事案に関するものです。
重加算税は「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装」していることが賦課要件とされています。
この事案において、東京地裁は以下の解釈を示したとのことです。
税理士に対する所得の秘匿が「過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」に当たるか否かについて、納税者が特定の所得を申告すべきことを熟知しながら確定的な脱税の意思に基づき、所得のあることを税理士に対して秘匿し、所得に係る資料も提供することなく税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させてこれを提出したと認められる限り、税理士に対する所得の秘匿は「過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」を構成すると解される
資料を提示しなかったという事実が、「特定の所得を申告すべきことを熟知しながら確定的な脱税の意思に基づ」くものであるかが問題となるわけですが、この事案では「納税者が土地建物に係る賃貸人を自己名義とせずにあえて母親名義とした点について、賃料収入の事実を税理士に伝えなかったことと相まって、賃料収入を秘匿し所得を過少に申告する意図に基づくものと推認される」とし、「過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」にあたるとして重加算税の賦課決定処分は適法と地裁は判断したとのことです。