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金商法監査-売上高区分1兆円以上の最低監査報酬は12,180千円?

2019年1月21日に日本公認会計士協会から「監査実施状況調査(2017年度版)」が公表されました。

これは、会計士協会に監査人から提出された監査概要書(写)及び監査実施報告書から抽出したデータをまとめたもので、1社当たりの人数の平均、1社当たりの時間の平均、各監査報酬の平均・最高・最低額などが記載されています。

2017年度の監査区分ごとの総計表は以下のとおりとなっています。

全合計ベースで2016年度と比較すると、1社あたり平均の監査報酬は14,412千円→14,540千円と微増、1監査対象あたり時間の平均は1,245.7時間→1,222.7時間と微減となっているため、時間当たり平均単価は11,570円/時間→11,892円/時間と微増となっています。

金商法監査に絞ると、個別のみの会社では、1監査対象当たり時間の平均が1,630.0時間→1,541.7時間と約5.4%減少し、1社当たり平均監査報酬も17,559千円→17,047千円と約2.9%の減少となっています。時間数の減少率の方が大きいので、時間当たり平均単価は10,773円/時間→11,057円時間に上昇しています。

時間数で見ると約5.4%の減少というのは結構大きい数字ですが、これが監査の効率化によるものであればよいですが、監査法人にも押し寄せる働き方改革という名の下でのサービス残業の増加だと現場の人間は気の毒です。

一方で金商法監査の「連結あり」の区分でみると、1監査対象当たり時間の平均は4,219.1時間→4,156.3時間と約1.5%減少していますが、1社当たりの監査報酬は48,470千円→49,259千円と約1.6%増加し、これにより時間当たり平均単価は11,488円/時間→11,852円時間に上昇しています。

時間単価だけでみると、一番高いのは特定目的会社の監査で1時間当たり14,606円となっています。二番目に高いのが学校法人で時間当たり12,979円なので、特定目的会社の時間当たり単価は突出して高いといってよさそうです。

また、興味深いのは会社法監査は1社当たり平均監査報酬は11,863千円と金商法(個別)の約7割にとどまっているものの時間当たり平均単価は12,233円と金商法監査よりも高くなっており、金商法監査に比べると訴えられる可能性は低いと思いますので、監査をする側にとってはおいしい仕事といえそうです。

金商法監査については、個別・連結別に売上高区分毎の監査報酬の最高・最低額も集計されています。

金商法の個別のみでみると、売上高区分10億円未満の金商法監査の最低報酬は、なんと90万円とのことです。そんなことがあるだろうかと検索してみると、確かに監査報酬が900千円という会社が1社存在しました。非上場の会社であるという要因はあるものの、注記もそれなりにあるので、普通90万円で監査はやらないよなという感じがしました。

なお、金商法の個別のみでは売上区高区分500億円未満での最低監査報酬3,500千円~4,500千円はいずれも非上場のゴルフ場の有報によるものでした。売上高区分が500億円以上の最低監査報酬は16,800千円で、検索してみると3社が該当しましたが、いずれも上場会社となっていました。

一方、金商法(連結あり)も売上区分10億円以上50億円未満、50億円以上100億円未満で最低の監査報酬となっているのは非上場の会社であることが確認できましたが、売上高区分1兆円以上となっている会社の最低監査報酬が12,180千円となっているのは何だろうと確認してみると、JFEホールディングスであることがわかりました。

わかってみれば、なんだそういうことかという感じですが、ホールディングスは提出会社の監査報酬はそれほど大きくなく、連結子会社の監査報酬が大きくなる傾向にあります。5000億円以上1兆円未満の最低監査報酬は12,450千円となっていますが、おそらくこれもどこかのホールディングスではないかと推測されます。

「監査実施状況調査(2017年度版)」では業種別(連結有無別)の情報も開示されていますが、個人的には金商法の上場・非上場別の集計も行ってもらえるとありがたいです。

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