監査人の交代が3年連続で増加
経営財務3399号に「監査人の交代 3年連続の増加」という記事が掲載されていました。とはいえ、増加といっても監査法人などの合併などを除くと2018年の監査人の交代は114件で前年比2件増ですので、顕著に増加しているというわけではないようです。
経営財務誌の集計では、監査法人の合併、共同監査の解消・監査の共同化、後任の監査人未決定などを除外した件数が114件であるとされています。
まず、業種別では卸売業15社、情報・通信業14社、サービス業14社、小売業12社と、この4業種が10社以上となっています。会社四季報2019年春版に記載されていた東証33業種別の上場企業数は、卸売業297社、小売業291社、サービス業289社、情報・通信業272社となっています。強いて言えば情報・通信業の割合がやや高いといえなくもないですが、それほど目立ったものではなく、特定の業種に偏っているというような傾向はないようです。
市場別に見ると、東証一部37社、東証二部15社、JASDAQ30社、マザーズ20社となっています。こちらも2018年末の市場別の上場企業数でみると、東証一部2128社、市場二部493社、マザーズ275社、JASDAQスタンダート688社となっていますので、上場企業数に対する割合でみるとマザーズが高いと言えそうです。
次に監査法人の規模別にみると、大手→大手29社、大手→準大手25社、大手→中小29社となっています。ここで大手とは、あずさ・新日本・トーマツ・あらたの4法人で、準大手とは、仰星、三優、太陽、東洋、京都、優成の6法人となっています。これら以外が中小となります。
大手から準大手・中小への交代が多いという傾向にありますが、監査法人の規模と上場市場の関係で見ると、大手→大手では本則市場20社、新興市場9社に対し、大手→中小のケースでは本則市場12社、新興市場17社となっており、これはイメージどおりではないかと思います。
交代経緯・理由については、「任期満了」が最も多い103件となっており、具体的な理由を記載せずに、単に「任期満了」とのみ記載されている事例が50社であったとのことです。一方で監査人交代の理由が記載されているもので多かったのは、「監査期間の長期化、定期的な見直し」24社、「監査報酬を勘案、契約条件折り合わず」21社、「事業内容・規模等による見直し」11社と続いています。
監査期間の長期化を主な理由として記載したケースでは、実際の継続年数を開示していたケースが4件あったとされ、このうち3件は10年、1年は8年だったとのことです。
普通に考えれば、2019年も同じくらいの数の交代が生じると考えられますが、2019年1月に「会社情報適時開示ガイドブック」が改訂され、監査人の異動理由について実質的な内容を開示することが求められるようになったことが与える影響にも注目です。