平成31年度税制改正を確認(その3)-法人税
平成31年度税制改正を確認(その2)の続きです。参考書籍は「税制改正マップ (平成31年度) あいわ税理士法人編」です。
7.組織再編税制の見直し
組織再編税制の見直しでは、株式交換等に係る適格要件および三角合併等に係る対価要件の緩和が図られています。
まず、株式交換等に係る適格要件の緩和ですが、これは株式交換等の後に、株式交換等完全親法人を被合併会社とし、株式交換等完全子法人を合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合の、株式交換等に係る適格要件が緩和されるというものです。
上記書籍では、現金を対価とする株式交換によるスクイーズアウト後、逆さ合併するケースが例として記載されていました。改正前は、このような株式交換は支配継続要検討等を満たさないため非適格株式交換となりましたが、今回の改正により、株式交換後の合併が適格合併である場合には、株式交換も適格株式交換として取り扱われることとなっています。
なお、上記のような逆さ合併が必要となる例として、子会社となる側が許認可事業を行っており、子会社を消滅会社とすることはできないようなケースがあるとのことです。
次に三角合併等に係る対価要件の緩和ですが、これは三角合併、三角分割、三角株式交換に係る適格要件のうち対価要件が緩和され、合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する法人の株式を交付した場合も対価要件を満たすこととされました。
これにより、改正後は親会社の株式を対価として交付することにより、企業グループ内の孫会社等との資本関係を崩すことなく当該孫会社等が外部の法人を吸収合併することが可能となります。
この改正は2019年4月1日以後に行われる合併等に適用されます。
8.役員給与(業績連動給与)の手続要件の見直し
従来、監査役設置会社では、監査役の過半数が業績連動給与の算定方法について適正である旨を記載した書面を提出した上で取締役会決議により決定した場合、監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役の過半数が業績連動給与の支給について賛成している場合における取締役会の決議の決定がある場合には、業績連動給与の損金算入が認められていましたが、今回の改正によってこの要件は廃止されました。
これは、2018年6月のCGコード改正よって、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社において報酬決定の手法として客観性・透明性の高い報酬諮問委員会の活用が原則とされたことを受けたもので、これらの会社では今後、株主総会の決議により決定する場合を除き、報酬委員会による決定または報酬諮問委員会の諮問等がなければ、業績連動給与の損金算入が認められなくなります。
この改正は2019年4月1日以後に支給に係る決議をする給与について適用されるとされますが、同日から2020年3月31日までの間に支給に係る決議をする給与については、現行の手続きによる業績連動給与の損金算入を認める経過措置が講じられています。
また、報酬諮問委員会の諮問による場合の要件も、報酬諮問委員会の過半数が独立社外役員であること、独立社外役員全員が賛成していることなどに見直されています。
9.法人設立届出書等の添付書類の見直し
改正前は、法人設立届を税務署に提出する際には、定款、株主名簿、設立時のBSなどを添付することとされていましたが、2019年4月1日以後に提出する届出書からは、定款(また寄付行為、規則の写し)以外の添付書類以外は不要とされました。
いままで取り上げた項目以外にも、「税制改正マップ (平成31年度) あいわ税理士法人編」では、公益法人等の貸倒引当金の特例制度の廃止、投資法人に係る課税の特例の見直し、連結納税制度に関する手続きの簡素化が取り上げられていますが、これらは割愛します。
法人税の改正はこれで終了です。