市場区分見直しに向けた第2回会合が開催
2019年5月31日に金融庁で金融審議会「市場構造専門グループ」第2回会合が開催されたとのことです(経営財務3411号)。
今回の会合では機関投資家側からの意見のヒアリングが行われ、その中で、投資家、上場企業、取引所の問題意識と議論の目的が異なっている可能性についての指摘があり、目的を共有することが大事であるという意見があったとされています。
また、海外投資家からの意見として、「海外投資家が日本株に投資しないのは、日本の市場構造に問題があるからではなく、株価上昇の期待値が低いから」、「(ガバナンスについて)海外とのギャップが激しい」、「投資家は自力で判断して投資するため市場区分を変えるべきではない」という意見があったとされています。
アベノミクスで海外投資家から評価されたのはガバナンスの改善であったという話も聞いたことがありますが、以前よりはましになったものの、なお海外水準ではギャップが激しいということなのでしょう。とはいえ、海外っぽいガバナンス体制をとっていても、粉飾が生じるので、かなり根本的な部分での意識改革が必要となるような気はします。
時価総額がすべてではないとはいうものの、世界でみれば日本で時価総額のトップ50に入っているのはトヨタ自動車のみとなっているような状況で、プレミアム市場だなんだといってみても投資家にはそれほど影響はないのだろうなという気はします。たしかに、優良銘柄で構成されるインデックスのようなものがあれば、運用コストが安くなって助かるという面はあるのかもしれませんが、一方で今時は機関投資家は望ましいと考えるポートフォリオを設定し時価の変動等によって自動で売買しているのではないかと思われますので、ありがたがるのは主に個人投資家だけという可能性もあります。
そしてやはり気にはなるは、市場区分が見直されるとして、時価総額がどこで切られるのかという点です。最近では250億円が有力のようですが、敢えて市場区分を見直すのであれば、250億で本当によいのかという議論が再燃するのではないかと思います。
現状の時価総額が100億円~200億円位の東証一部上場会社は、250億円ならがんばろうという気が起きると思いますが、当初言われていた500億ということであれば、無駄な努力は諦めるという会社も相当数あるのではないかと思われます。
もっとも、サラリーマン社長の場合、自分の代で東証一部から降格したという汚点は残したくないはずなので、250億円であっても500億円であっても諦めるという選択肢はとりにくいとは思います。素直に考えれば、そのような会社は増配など株価を上げるための施策がとられそうだと考えられます(一方でハイリスクな戦略がとられる可能性も考えられるわけですが)。これらに加え、株主総利回りの開示が求められるようになっていることもあり、基準を250億円とするならば、そこにあと一息で、資金余力がある会社は増配が期待できるということかもしれません。