一定の短期払のがん保険も資産計上対象に
2019年6月28日に国税庁より「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表され、最高解約返戻率50%超の定期保険等は、保険料の一部を資産計上することが必要とされました。
いわゆる節税保険の封じ込めであり、最高解約返戻率が50%超の定期保険等は保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれるものとして、保険料の一部を資産計上しなければならないこととなっています。
最高解約返戻金の割合に応じて、50%超70%以下、70%超85%以下、85%超の三つの区分が設けられ、最高解約返戻金が85%超のケースでは、保険期間の開始の日から最高解約返戻率となる期間の終了の日までの期間において、当期支払保険料の額×最高解約返戻率の70%(最初の10年間は90%)を資産計上することが必要とされています。
解約返戻率が85%を超えるものについては、最初の10年間において最高解約返戻率の90%を資産計上しなければならないこととなり、仮に最高解約返戻率が90%であったとすると、90%×90%=81%は資産計上(損金算入は19%)となります。なぜ10年なのかについては、節税保険として存在した一定期間災害保障重視型定期保険では、災害による死亡の場合のみ保険金が支払われる当初の5年または10年間の間に解約しなければ解約返戻率が大幅に低下するような仕組みになっていたためとされています。
上記の取扱いについては、改正案で示されていたとおりですが、改正案では示されていなかった「短期払のがん保険等」にも一定の制限が設けられることとなっています。ただし、この取扱いについては改正案で示されていなかった取扱いであるため、2019年10月8日以後の契約分から適用されることとされています(税務通信3563号 税務の動向)。
「短期払のがん保険等」とは、保険期間が終身でありながら、保険料の払込期間が短期に設定されている保険商品のことで、保険料の全額を損金算入できるほか、払込期間の終了後に、法人から個人に名義を変更することで、個人が保険料等を負担せずに済むなどというメリットがあるとされています。
がん保険も既に資産計上が必要になっていたのでは?と思いましたが、例外的取扱いとして「短期払いのがん保険等」の保険料については、支払の都度損金算入が認められていたため、この例外的取扱いを利用して、保険期間が終身であるにもかかわらず、高額な保険料を短期で損金算入できる保険の販売が横行していたそうです。
そこで、今回の改正によって、このような保険も節税封じの対象となったということのようです。ただし、短期払いのがん保険等すべてについて資産計上が求められるわけではなく、年間の支払保険料が30万円以下の「解約返戻金のない短期払いの定期保険又は第三分野保険」については支払日の属する事業年度での損金算入が認められています(法基通9-3-5(注2)2)。
では、年間支払保険料が30万円を超えるものはどうなるかですが、終身の第三分野保険は、「保険課期間開始日から被保険者の年齢が116歳に達する日まで」を保険期間とみなして、保険期間の経過に応じて支払保険料総額を損金算入することが必要とされています。46歳でそのような保険に加入した場合には70年間にわたって損金算入するということになります。
いきすぎた商品は目を付けられるの致し方ないとしても、保険期間を116歳までとみなすというのもどうなのかなという気はします。