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「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)が19年3月で実質終了ーその後どうなった?

リーマンショック後の2009年12月に立法化された中小企業金融円滑化法は、時限立法として2013年3月末で終了したものの、その後も金融庁が金融機関に任意で「貸付条件の変更実施状況」の報告を求めたことから、実質的に継続されているも同様の状況となっていました。

同法は、中小企業や住宅ローンの借り手が返済負担の軽減を金融機関に申し入れた際に、金融機関が融資先に対する返済猶予や金利減免などのリスケによって、返済負担の軽減を図るように努めることを要請するものでした。

あくまで努力義務なので、このような申し入れに応じるか否かは金融機関の判断ということになりますが、金融庁が公表している「貸付条件の変更等の状況について(平成30年4月から平成31年3月末までの実績)によると、債務者が中小企業者のの場合、申込件数740,452件に対して、実行件数が721,814件と、実行率は97.5%と異常に高い数値となっていました。


(出典:金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」(2019年6月28日公表)

上記の報告も任意というものの、各金融機関は金融庁に目を付けられたくないため実質的に報告を継続しなければならなかったようです。しかしながら、事務負担はそれなりに重かったようで、全国銀行協会が内閣府が所管する「規制改革ホットライン」に、「貸付条件の変更実施状況」の報告廃止したとされています。

これを受け金融庁は金融機関に条件変更や円滑な資金供給への姿勢が浸透したとして、2019年3月期をもって報告を休止することとしました。「廃止」ではなく「休止」というのがいやらしいところで、報告を行わなくなったからといって、リスケの申込みに応じないようことが広がったら、報告を再開するぞということのようです。

金融庁からすれば、「金融機関に条件変更や円滑な資金供給への姿勢が浸透した」なのでしょうが、一方で従来倒産件数が減少してきたのは、”「事実上、強制力のある任意報告の体制が続いたため」(金融機関担当者)との見方もある”とされています(東京商工リサーチ「金融庁、「貸付条件の変更実施状況」の報告を休止へ」)。

個人的には上記の担当者の見方のほうが妥当なのではないかという気がしています。新日本法規のサイトに帝国データバンクの中森貴和氏の執筆した記事が掲載されており、その中で、以下のように述べられています。

旧来のビジネスモデルを温存したままの救済策が企業の新陳代謝を阻み、ゾンビ企業の増殖を招いたことは否めない。「リスケ先の5割程度が業績は改善せず、正常先債権への格上げは4割にも満たない」(大手信金審査部)のが実状であり、水面下では中小零細を中心に“倒産予備軍”が着実に膨れ上がっているのは間違いない。

ちなみに、上記の記事では直近の状況について以下のように述べられています。

帝国データバンク調べによる金融機関から返済条件の変更等を受けた企業の「返済猶予後倒産」は2013年3月の金融円滑化法終了直後に急増、その後は小康状態が続いてきたが、2019年上半期(2019年1月~6月)は256件と前年同期を24.9%も上回り、増加の兆しを見せている。

来月から増税される消費税の影響が、リスケ申込件数にどのような影響を及ぼすのかはもはや知ることはできませんが、それを知られたくないタイミングで廃止したのではないかと疑わしくも感じます。

全体として日本経済は緩やかな回復基調にあると言われていますが、果たしてそれが継続するのか、10月以降が不安です。

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