時価の算定に関する会計基準(その2)
“時価の算定に関する会計基準(その1)“の続きです。
5.時価算定の方法(インプット)
インプットとは、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定をいい、例えば、相場価格、金利、ボラティリティ、リスクに関する調整などが該当します。
インプットはレベル1からレベル3に区分され、レベル1のインプットが最も優先順位が高く、レベル3ののインプットが最も優先順位が低いとされています。
レベル1のインプットは、時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関するインプットであり、調整されていないものをいうとされています。
レベル2のインプットは、資産又は負債について直接または間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプットをいうとされています。レベル2のインプットは、観察可能なインプットですが、レベル1のインプットに対する調整を行ったものということになります。これだといまいちよくわかりませんが、全期間にわたり観察可能なスワップ・レートや観察可能な市場データに裏付けられるインプライド・ボラティリティなどが該当するようです。
レベル3のインプットは、資産又は負債の時価の算定における観察可能な市場データではないが、入手できる最良の情報に基づくインプットをいうとされています。これの具体例としては、観察可能な市場の裏付けがないスワップレートやヒストリカル・ボラティリティなどが該当するようです。
なお、資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下している場合には、観察可能なインプットのみを使用したからといって時価を適切に算定することにはならず、調整を行う必要があります(基準13項)。
6.時価レベルの分類
インプットを用いて算定した時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル 1 の時価、レベル 2 の時価又はレベル 3 の時価に分類するとされています(基準12項)。
時価を算定するために異なるレベルの複数のインプットを用いており、これらのインプットに、時価に重要な影響を与えるインプットが複数含まれている場合には、その中で優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類することとされています(基準12項)。
7.時価を把握することが極めて困難な有価証券の取扱い
時価算定会計基準が公表されたことに伴い、金融商品会計基準における時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の貸借対照表価額についての規定も改正がなされています。
これは、時価算定会計基準においては、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットに基づき時価を算定することとされており、このような考え方の下では、時価を把握することが極めて困難な有価証券等は想定されないと考えられたためとのことです。
では、どう変わるのかですが、金融商品会計基準では従来の「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」が「市場価格のない株式等の取扱い」と変更されています。ただし、「市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。」とされていますので、実質的な影響はほとんどないといえそうです。
今回はここまでとします。