監査時間も報酬も増加傾向-2018年度「監査実施状況調査」
2019年11月11日に日本公認会計士協会から「監査実施状況調査(2018年度)」が公表されました。
これによると2018年度(2018年4月期~2019年3月期)の金融商品取引法監査対象(連結財務諸表提出会社)3287社について、平均監査時間は4259.6時間、平均監査報酬は5087万1000円であったとのことです。
監査法人でも働き方改革が騒がれている中、2016年度から2017年度では平均監査時間が4219.1時間から4156.3時間に減少(平均報酬は4847万9000円から4925万9000円に増加)していましたが、2018年度は再び平均監査時間が増加に転じ、2016年を上回る結果となっています。
ちなみに2013年度の平均監査時間は3837.5時間であったことからすると、2018年度の4259.6時間は約11%の増加となっており、ここ5年でかなりの監査時間が増加しているといえます。色々な問題が発覚し、監査人に求められることが増えていることが影響していると考えられます。
2018年度のデータを売上高の規模で見ると、売上高500億円以上の会社で1社あたりの平均監査時間と平均監査報酬が増加しており、規模の大きな会社での監査時間が増加しているということのようです。
IFRSの任意適用会社数も増加してきており、時価総額ベースでは結構大きな割合を占めるとされていますので、IFRSの任意適用会社のみの監査時間や監査報酬額も集計し公表してもらえるとありがたいのですが、今のところそのような集計は行われていません。
2019年11月21日の日経新聞の記事によると、金融庁の金融審議会は、東証の市場改革に向けて、現在の東証1部にあたる市場は海外からの投資を集める優良企業に絞るという方向性を示したとされています。さらにTOPIXも銘柄を絞り込んだ新指数にするのが望ましいとしたとのことです。
”1部から外れる「降格」への企業の反発も強く、金融審も数値基準に踏み込めなかった。”とのことですが、野村證券がリークして問題となった時価総額250億とかいうレベルの話からすると、かなりレベルの高い話になっている印象を受けます。
個人的には、時価総額250億位で足切りしても相当な数が残ることになると考えられるため、あまり意味がないと感じていたので、金融庁の方針でいいのではないかと考えています。特に今後日本では人口が減少し、残念ながら国としては縮小していく可能性が高いことを踏まえると、海外から資金等を呼び込める会社が日本を代表する市場に上場しているというのは望ましのではないかと思います。
会社からすると東証1部から降格されるというのはイメージ的にも望ましいことではないと思いますが、一定の数値基準で切ってもらった方が諦めもつくし、対外的な説明もしやすく、むしろ定性的な判断によって選別された方が、よりダメな会社という印象を与えるのではないかという気がします。
会社の状況にもよりますが、降格されたら上場廃止を選択する会社もでてくるのではないかという気がします。上場していても資金調達をするわけでもない会社が大多数という中で、降格される会社が多数生じることにより、MBOブームが到来することになるのかもしれません。妄想ですが・・・