非喫煙者に限定した求人・採用の可否
2020年4月1日から改正健康増進法及び東京都受動喫煙防止条例が全面施行されることとなっています。私は非喫煙者なので、個人的には全く問題ありませんが、喫煙者にとっては大変な世の中になっているということのようです。
来年の改正法等の施行に向けて2019年12月号のビジネスガイドに「企業がどこまでできる!?仕事中・私生活上の禁煙制限」という記事が掲載されていました。
この記事では、各企業の具体的な取り組みがいくつか紹介されています。このうち、すかいらーくグループでは、「本社従業員の通勤路での歩きたばこや会社周辺のコンビニ前などでの喫煙を禁止(ただし、罰則は設けない)」とされており、一方、生駒市(奈良県)では、「喫煙した職員は、45分間、エレベーター利用禁止」とする受動喫煙対策を平成30年4月1日から導入しているとのことです。
すかいらーくグループについては、ヘビースモーカーには厳しいのかもしれませんが、通勤路であっても喫煙所で喫煙する分には問題なく、会社近所のコンビニ前の喫煙はやめてくれというだけですので、それほど厳しい内容ではないと思われます。
一方、生駒市は喫煙後45分間はエレベータ利用禁止というのは、何階建てのオフィスで喫煙所がどこにあるのかにもよるものの、なかなか厳しい制約です。なぜ45分なのという点については、「喫煙後の息に含まれる有害な成分を周囲の人が吸い込むこと(三次喫煙・サードハンドスモーク)を防ぐ目的で、喫煙者の喫煙後の息(呼気)に含まれる(総揮発性有機化合物(Total VOC)の濃度が通常レベルまで減るには45分かかるという産業医科大学等による研究の結果を踏まえたもの」とのことです。
エレベーターは密閉された空間なので影響が出やすいということなのだと思われますが、その理屈でいえば、カウンター越しに住民対応をするようなケースも禁止されてもよさそうな気がします。
一般企業でここまでやるかは別として、受動喫煙などへの対応を踏まえると、会社としてはそもそも求人・採用を非喫煙者に限定したいというニーズも当然に生じてくると考えられます。
会社には原則として「採用の自由」を有していますが、一方で、障害者雇用促進法、男女雇用機会均等法、労働組合法、職業安定法、雇用対策法等によって規定されている場合には使用者の採用の自由が制限されることとなります。
そして、休職者の個人情報の収集については、職業安定法等によってセンシティブ・データの収集が原則として禁止されています。
しかしながら喫煙するかどうかについてはセンシティブデータに該当せず、「職業安定法による個人情報収集の制限の対象外と考えられます」とされ、「応募者の喫煙の有無等について申告を求めることが許されると考えられます」と述べられています。
実際に多くの企業で「喫煙者不採用」の方針が明記・公表されているとされ、理由としては以下のようなものが挙げられているとのことです。
①労働者の作業効率
②タバコの臭いが染みついている労働者は接客相手や他従業員の気分を害する
③施設の利用効率の低下(喫煙スペースの節約)・資産の劣化
④喫煙者労働者の離席による非喫煙者労働者の負担増(電話対応その他)
⑤非喫煙者からの喫煙者に対する不公平感
⑥企業競争力 など
そして、上記のような理由からも、「使用者側が応募者の喫煙の有無を理由に雇入れを拒むことは、「差別」とはいえず、むしろ「合理的な理由」に基づくものと評価されます」と結論付けられています。