帳簿の提示を拒み続け約29億円を納付
税務通信3583号に東京地裁で11月21日に判決が下された訴訟が取り上げられていました。
この事案では原告(法人)が国に対して消費税の仕入れ税額控除に係る帳簿等の提示を拒み続けたことが、消費税法30条7項(平成27年改正前)の「帳簿等を保存しない場合」に該当するか否か等をめぐり争われたものとのことです。
この法人は、遊技場を経営する法人で、平成26年2月に事前通知なしの税務調査を受け、消費税の仕入れ税額控除に係る帳簿又は請求書等の提示を求められたものの、その求めを拒否したとされています。
同法人には合計7回にわたり調査が行われたとされ、初回以外は事前に調査予定日を予告する連絡票が送付されていたとされています。このことからすれば、見られたくないものがあるため、事前通知がなかったことを理由にゴネてみたという感じはしますが、この記事によると「事前通知なしの税務調査に不満を抱くX社は、具体的な理由について東京国税局長による文書で回答を求めたが、その応対が得られなかった。結果、約1年4か月もの間、帳簿等の提示を拒み続けた」とされています。
その結果どうなったかいえば、国は3課税期間に係る消費税の仕入れ税額控除は認められないとして、約27億円の仕入税額控除を不可とした更正処分等を行ったとのことです。
もっとまずい何かがなければ、ここまで頑なな態度をとる意味が個人的には理解できません。11月27日時点で高裁への控訴は行われていないとのことですが、地裁の判決にすんなり納得するのであれば、帳簿を提示していそうな気もするので、最終的な決着となるのかは興味のあるところです。
なお、この判決において東京地裁は、調査時に提示可能でなければ「帳簿等を保存しない場合」に該当するとした最高裁判例を踏まえ、当事案では初回を除けば事前に調査実施日を予告し、提示すべき帳簿等が明確にされていたほか、国側は調査実施日の変更に応じるなど対処していたと指摘したとされています。
さらに、国税通則法74条の10(事前通知を要しない場合)の性質上、「その情報(理由)を納税者に開示することは想定されていない」としたうえで、X社は国の求めに応じがたいとする合理的な理由はなかったにもかかわらず、帳簿等の提示を拒み続けたものと認めるほかないとし、消費税法30条7項の「帳簿等を保存しない場合」に該当すると判断したとされています。
ちなみに当初納付額は2億円に対し否認後は29億円で27億円を追加で支払うこととなっているとのことですが、仮にクリーンであれば、変に意地を張って27億円余分な税金を払うことになるわけですから、第三者からすると馬鹿馬鹿しいとしか感じられません。
意地を張るのもほどほどにしましょう。