いままで消費税申告延長が認められなかったのは何故?
令和2年税制改正大綱の消費税関連に「法人にかかる消費税の申告期限の特例の創設」が織り込まれ、法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人は、法人税と同様、申告期限を1か月延長することが可能となる見込です。なお、大綱ではこの改正は令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日に属する課税期間から適用するとされています、
これは従来から要望がかなりあったはずですが、そもそも今まで認められていなかったのは何故だろうと思っていましたが、税務通信3587号のショウ・ウインドウでその理由について取り上げられていました。
今まで消費税の申告延長が認められていなかったのは、「端的に言うと、消費税の確定申告書の提出については、法人税のように”確定した決算に基づく”必要がないため申告期限の延長が認められていなかったということだ」とされています。
なお、「消費税は預り金的な性格を有しているため申告期限を延長する必要がないとの考え方に基づいているとの説もある」そうですが、過去に争われた裁決(平6.5.24裁決)では以下の整理がされているとのことです。この裁決事例は国税不服審判所のサイトによると、法人税の申告期限延長の特例適用を受けていることをもって、消費税の期限後申告について、正当な理由があるとはいえないとしたものです。
※法人税は事業年度の終了の時に、消費税は課税資産の譲渡等をしたときにそれぞれ納税義務が成立する(通法15②)。
※申告納税方式にあっては、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則としている(通法16①一)。
※法人税では、内国法人は各事業年度の終了の日の翌日から2月以内に税務署長に対し、確定した決算に基づき申告書を提出しなければならないとしている。会計監査人の監査を要することにより決算が確定せず期限までに提出できない常況にあると認められる場合等は、確定申告書の提出期限の延長を受けることができる(法法74①、75の2)。
※消費税では、課税事業者は、課税期間ごとに当該課税期間の末日から2月以内に、課税標準額等を記載した申告書を税務署長に提出しなければならないとしている(消法45)。
※以上を踏まえると、消費税の納税義務は、課税資産の譲渡等の時に成立しており、通常、継続して事業を行っている事業者は、その課税期間を通じて各日ごとに取引があり、その取引ごとに消費税相当額を受領し、消費税を転嫁しているのであるから、確定した決算に基づくことは、消費税の確定申告者を提出する上での要件となるものではない。
とはいえ、実務上は法人税の申告期限を延長している場合は、消費税申告書提出後に修正が加わる可能性がある以上、改正によって消費税の申告期限の延長が可能になるのは歓迎です。